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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-31 安芸で変わらなきゃ!・・・ヤング猛虎、捨て身の猛練習


小嶋達也 選手

安芸が大変だ!明らかにこれまでとは何かが違う。疲れのピークを通り越しても尚、南国の潮風を受けて若虎たちが躍動する・・・ベールを脱いだ新生・和田阪神が、いよいよその個性的なスタイルを見せ始めた。

11月8日(火)、高知県安芸市の秋季キャンプは、第2クール初日を迎えていた。暦は立冬でも、日中は半袖のシャツでもイイくらいの快晴!和田豊前打撃コーチが監督に就任して新体制で取り組む初めてのキャンプだけに、毎日が新鮮な驚きで満ち満ちている。

このクールから、新たに招聘された有田修三ヘッドコーチ(60)が合流した。現役時代は名将・西本幸雄監督の下でプレーした捕手。近鉄~巨人~ダイエーを渡り歩き、コーチとしても阪神で一軍とファーム両方を教えるなど、経験豊富な歴戦のツワモノ。還暦で16年振りのタテジマ復帰となった。三國志に名高き軍師・諸葛孔明の如く、若き新監督を補佐するにはうってつけの頼れる存在である。


藤原正典 選手

1999年の近鉄バッテリーコーチ以来、12年振りのユニフォーム姿。練習前の挨拶で背番号77を着けた新参謀は、「元気を出して行こう。優勝しよう!」とナインに第一声を放った。その言葉通り、初日から精力的に動く。メイン球場での全体練習を見届けるや、すぐにブルペンへ急行。キャッチャーの魂は健在だ。最初に注目したのは小嶋達也投手だった。まず、右打席に入って球質を確かめると、マウンドに向かって歩を進めて握手を求める。そして、耳元で何か囁くと、この後、若き左腕の投球が内角を鋭くえぐり始めた。「いや、挨拶だけです!」と小嶋は煙に巻いたが、そうだとすれば何か魔法にでもかけられたのか?としか思えない。やはりサウス・ポーの藤原正典投手にも声をかけ、「課題としてる球に(1回目で)気づいてもらって・・・」とたちまち心をワシ掴みにしている。


久慈照嘉 内野守備走塁コーチ

時間を少し遡るが、メイン球場ではこの日ベースランニングと投内連係、『打球判断』なるメニューが進行されていた。『一死1・2塁』など想定するケース毎に片岡篤史打撃コーチが放った打球に対する守備側、攻撃側双方の判断力をチェックする。例えば走者であれば、打球の方向や勢い、守備者の能力などを総合的に考えて、ハーフウェイがイイのか?あるいはタッチアップなのか?を瞬時に決めて行く。有田ヘッドが、山脇光治守備走塁総合コーチと話しながら、選手の動きを粒さに観察していた。

「今季ウチは、二死2塁からワンヒットで返れない(ケースが多く、また)、1・3塁というカタチをなかなか作れなかった。(こういう練習を)やってます!じゃなく、数多く打球を見て判断出来るようにならないと・・・コーチャーじゃなくて自分で(判断出来る事が大切)」。和田監督が、この練習の重要性を説く。「今は(少し無理をしても)行って失敗する位じゃないと。アウトになるケースもあるが、今は失敗して失敗して・・・」感覚を身につける姿勢を奨励している。

さらに和田監督は、来季のベースコーチについて、久慈照嘉内野守備走塁コーチを三塁に、新任の関川浩一外野守備走塁コーチを一塁に配置する考えを明らかにした。今季は一塁ベースコーチだった久慈コーチだが、「ファーストから見れば、全部が見えるし(三塁コーチの動き、判断に)ああすればイイ、こうすればイイというのはあったと思うが、・・・プロでは初めて。久慈流で良いが、基礎となるところは叩き込んで」と話す指揮官。「選手の足も、他球団の選手の肩も(今の内から)覚えないと。久慈の声と身振り手振りが、パッと見て『あっ、コレはこういうサインだ』と選手に分かるようにならないと一体感は出て来ない」。選手だけでなく、コーチにも色々可能性を引き出して行きたい!と考えるのが、和田流なのだ。


上本博紀 選手

翌9日(水)もサプライズは止まらない。阪神では超異例の早出特守が、サブグラウンドで展開されたのだ。仕掛け人は、件の久慈コーチ!全体練習前にアーリーワークに取り組んだのは上本博紀内野手と黒瀬春樹内野手の二人、で約40分間のノックに汗を流した。

「阪神では(自分自身も経験が)ないが、中日の時に朝特守を結構やって、意外と最初身体が重いなぁーと思っても・・・(居残り特守と違って)朝なら疲労感なくて清々しいでしょ?朝は周りに誰もいないし、集中して選手を見れる。キャンプでは流れがマンネリになるから、違う事やることで少し新鮮味というか・・・」。来春キャンプでの導入も含めて、久慈コーチは今後とも新機軸を打ち出して行くつもりでいる。

全般において、これまでと比べても練習中良く声が出て活気を感じさせる印象があるキャンプとなっているように思われるが、「監督が『野球で使える声が出るように』と。(報道陣の)みんなが、声出てるな、と感じてくれたら・・・。上本なんか、もう声枯れてるから。(元気な新井)良太は、ムードメーカーや!」と久慈コーチも声出しの指示があった事を認めている。


榎田大樹 選手

「無駄な声はあんまり意味ないけど、要所要所で必要な声を出して行きたい。アンサーとか、必要な声を」と話す上本。この日は一日中動き回った印象だが、早朝特守について次のように話した。「(全体練習が)終わってから特打だったので、その分朝に・・・。守備の課題は全部。(今季も昨季も)毎年守備のミスで試合に出られなくなったので、(守備力向上が)一番の課題。送球よりも、しっかり捕る事。握りかえせず一発で放れるように。それが課題です」。

この日(9日)は、午前中メイン球場を使って投手陣だけの本格的な打撃練習が行われたが、これも異例のメニュー。打撃コーチのアイデアで投手自らが打撃投手を務める中で、参加全投手が打席に入って気持ちよさそうに快音を響かせていた。「投手も打席に入るんだから、これも準備の一つ」だと、指揮官。投手が真剣に打撃に取り組む姿勢が、野手との信頼関係を深める。各投手の打撃を5段階評価で採点したという片岡コーチは、「榎田なんて良い打撃してるもんね!チームで戦うから、これからボクらもアドバイスして行きたい」と話している。

キャンプ一週間で早くも見えてきた『和田イズム』。汗と土にまみれて、暗くなるまで宿舎に帰ろうとしない若虎たちの背中に明るい未来が見えて来る。