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秋季キャンプコラム

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2022.11.14
『不死鳥左腕』再起の誓い
11月10日(木)〜11月13日(日)

秋季キャンプは折り返し。新機軸を掲げる新生岡田阪神の陣容も徐々に固まって来た。

憧れだった背番号

9日(水)朗報相次ぐ。去就が注目されていた西勇輝投手がFA権を行使して残留。岩貞祐太投手もFA権は行使せずにチームに残る事を表明した。これで岩崎優投手を含めてFA権保有の3選手が来季も揃って阪神でプレーする事が明らかとなっている。

「チームに必要無いんじゃないか?」という思いが長考の要因だったという岩貞。それでも、このチームで優勝したい強い気持ちは変わらなかった。そして、球団からの誠意は示された新背番号に表れる。今季限りで移籍先のオリックスで引退した能見篤史投手が阪神在籍中に着けていた『14』。ずっと憧れていたナンバーを「次のステップに相応しい」タイミングで背負う事に左腕は心からの喜びを噛み締めていた。

兵庫県西宮市の球団事務所で髙橋・森木・遠藤ら9選手が契約更改に臨み、来季への決意を述べた。

ゴールデンルーキーとして夏場にデビュー。プロ初登板で大器の片鱗を見せつけたものの2戦2敗に終わり「プロの厳しさを感じた一年」と振り返った森木大智投手は、コンディション不良の為に秋季キャンプへ行けず別メニュー調整中だ。監督も代わって「一年目と同じ気持ち」で臨む来季は、「一個一個の(投球)精度を高くしなければ」通用しないと思っている。「先ずは怪我を治して頑張って行きたい。(高卒ドラ1の先輩であるの西)純矢さんに追いつき追い越せるように!」。2年目の目標を「5勝はしたいな」と高く掲げていた。

「毎年怪我をしてるけど、1試合も投げないと空しい感じ」。プロ入り後も度重なる故障に悩み続け、遂に今年4月下旬。左肘内側側副靱帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を受けて、5年目を初の一軍登板無しで終えた髙橋遥人投手。暫くは試合を観る気にもならなかったが、気がつけば中継を食い入るように観ている自分がいる。何故この投手が勝てるのか?その秘訣を探ろうと研究していたと言う。

同じトミー・ジョンから復活を遂げた才木・島本にも勇気をもらった。キャッチボールを再開して数ヶ月。今では「40メートル弱位」まで投げられるようになっている。「可動域が前と全然違う。去年あの状態で何試合か勝つ事(4勝)が出来たので、それよりも高いレベルになると確信している」。何度倒れても起き上がる。不死鳥復活をチームもファンも待っている。

秘伝!ワセダ戦法や

10日(木)秋季キャンプが第3クールに突入。午前中にはギャンブルスタートから本塁へ突入する際、真っ直ぐ最短距離を走ったり、捕手のタッチを掻い潜って滑り込むなど独特な走塁練習を行った。

「ゴロゴー言うても、ちょっとでも真っ直ぐ行く道を探さなアカン。何センチか分からんけど、真っ直ぐ行くのと斜めから入るのでは距離が遠なるやんか。早稲田戦法や。ゴロゴーはラインに(沿って)真っ直ぐ。捕手との距離感を分からんようにする。(走塁が)三塁へ戻る時も(ライン上なので)背中に当る」。走者を最短距離で突っ込ませる理由を岡田彰布監督は、母校の戦術から説明する。

勿論、場合によっては回り込む走り方もある。「今はコリジョン(ルール)があるのでブロック出来ない分、しっかり交わしながら一番捕手がタッチし難い場所を滑るという練習。(本塁の)一角・三角形の部分しか見せずにソコを触れるか?というところで全員上手く触れてたのでしっかり出来ていたと思う」。前政権から引き続き一軍の指導に当る筒井壮外野守備走塁コーチは語る。「(右寄りからの返球なら)追いタッチになるので捕手の向きや体の使い方が変わって来るから遠くへ滑るバリエーションもあるかな?基本的に一番は最短(真っ直ぐ走る事)だけど、そういう状況に陥った時にどういう身のこなしが出来るか?って言うのが、1点を争う中で大事だから、それぞれがしっかりと引き出しを持っておく」べきだと話した。

1〜2クールまでは直球オンリーだったブルペンでは、変化球が解禁となった。「梅野と坂本が『今の何や?』と聞くくらい、何を投げてるか?分からんとこあったな」。指揮官が苦笑する。西純は、来季の武器にするべく習得を目指すカットボールを投じていた。村上も新しい握りのフォークに取組むなど若手投手陣が競うように様々な追究に余念がない。

また、この日はTA(テクニカル・アドバイザー)から現場復帰したファームの和田豊監督が合流。早出特守から木浪・熊谷を指導するなど終始積極的だった。「色んなモノを吸収して下にも伝えないといけない。監督の考えとか。15年前は一緒にやらせてもらって大体の事は分かるけど、基本的な事は変わらなくてもポイントポイントは修正されたり変化もあると思うので」。一軍の意向を十分汲んでからファームの方針を固めるつもりだ。

宮崎のフェニックスリーグでも選手を観てきた和田監督だが、「まだ1週間だけど力強くなってるし、変化が見て取れるくらいのモノは出て来てるから。実戦に入ると結果出そうと思ってフォームを崩して打ったり、色んなことが出てくるんだけど、今は固める段階。打ち込んで、かなり下が出来てる」と短期間での進歩に目を見張る。「守備でも自分の目で見るとあーなるほどな!と言うのが多かった。スピードというか、キレが出て来てると言うか。数こなしてるんで。二遊間もそうだけど、投内(連係)もしっかり出来ている。接戦になるとそこで落としたり取ったりという勝負になって来ると思うから。(岡田)監督も重々承知で、その時のための練習をね」。

侍コンビが合流

11日(金)侍ジャパンの強化試合を終えた佐藤輝明・中野拓夢両内野手が高知入り。

12日(土)から練習に参加した。合流の効果もあって、安芸には今キャンプ最多2,000人のファンが訪れ、猛虎に熱視線を送っている。合流初日から佐藤輝はランチ特打を行うなど精力的。ここ2年で不動のレギュラーに定着したが、厳しい声も聞かれる。そのポテンシャルの大きさ故に求められるレベルも段違いなのだ。3年目に向けて更なる体力強化とガムシャラな姿勢が望まれる。

中野は新しいポジション獲りに意欲を見せた。チーム方針に沿ってショートからの本格転向になるが、走塁・打撃を含めた総合力は折り紙付き。二塁手として新境地を開いてほしい。

13日(日)第3クール最終日。雨天の為室内練習となったが、内野だけのシートノックでは、移籍の渡邊がサードの位置に入る新しい動きもあった。今キャンプで初めて渡邊・髙濱の打撃を見た和田ファーム監督は、パ・リーグで培った真っ直ぐに負けない力強いスイングに舌を巻いていた。この持ち味に加えて、いかにセの野球に適応出来るかが、今後の注目点だろう。

この日を持って梅野隆太郎捕手は一足早くキャンプを終えて帰路に着いた。10日余りの高知滞在だったが、ブルペンでは連日若手投手の球を受け、その特徴の把握に余念がなかった。気迫いっぱいのヘッドスライディングで走塁練習を締める一幕もあり、改めて一際の存在感を示した背番号2。様々な収獲をお土産に、あとは自らのペースで来季への準備を進めて行く。

第3クール中には、来春キャンプに臨時コーチとして赤星憲広さん・鳥谷敬さんと言ったV戦士でもある大物OBを招聘するプランが明らかになった。「やっぱり、そら違うよ。選手もな」。岡田彰布監督もレジェンドの影響力に期待を寄せる。

鍛錬の秋は、あっという間に終盤へ。今回安芸に来ていない選手たちも虎視眈々と爪を研いでいるはずだ。