- 2024.11.4
- 一心不乱に!安芸で『没頭』
新体制発足から短期間で組閣、秋季練習、ドラフト…来季を見据えた動きが目まぐるしい。11月に入って秋季キャンプもスタート。新生藤川阪神が、その全貌を少しずつ見せ始めた。
パナマから来たニューフェイス
10月29日(火)甲子園で行われている秋季練習にみやざきフェニックス・リーグから帰還したファーム組が合流。通年でも珍しい大所帯でのトレーニングとなった。
一軍主力メンバーでは西勇・大山・木浪らは全体練習に加わっていない。この日から侍ジャパン合宿(宮崎)に召集された才木・森下も不在だが、グラウンド一杯に散らばるタテジマは壮観である。
全体ノックには、宮崎から帰ったばかりの井上広大外野手が自前のファーストミットをつけて内野守備にも挑戦。活躍の可能性を広げるべく意欲的な姿勢を見せていた。
午後の室内練習には、この日育成契約を結んだパナマ出身のジーン・アルナエス内野手(前ブルージェイズ傘下)が合流した。藤川監督とも笑顔で挨拶を交わし、早速初日から爽やかな汗を流している。右投右打で内野複数ポジションと捕手も出来るユーティリティな22歳は『毎日全力プレー』がモットーで伸びしろ十分。来季の秘密兵器になり得る素材だ。
30日(水)秋季練習最終日。午前中室内で体を動かした野手陣は、午後からグラウンドに出てシートノックなど守備練習を行い全体メニューを締めた。
末はサイキか?モリシタか?
31日(木)兵庫県西宮市の報徳学園でドラフト2位 今朝丸裕喜投手(報徳学園高)へ球団編成部が指名挨拶。席上、畑山統括スカウトは、最大級の評価に加えて「将来は日本を代表する投手に」と期待の言葉を伝えている。
187cmの長身から150km/h台の速球を投げ込む超高校級右腕。U-18日本代表にも選ばれた甲子園のスターは、「阪神に入って1年目は体力作りをしっかりして、2・3年目に一軍で投げさせてもらえる」事を視野に、現在は「(来年1月の新人合同自主トレまでに)出来るだけ体重を増やしたい」と出力アップを図っている。チーム内で目標とするのは才木投手だが、熊野輝光スカウトによると「(タイプ的には広島の)森下系かな」との事。「柔らかさも兼ね備えているので、その辺が一番の魅力。手元でボールが伸びてくるというような。(それでいて)変化球も低めにぼっと投げられると言うか…」。改めて2巡目のウェーバー順まで残っていた事に心から安堵していた。
秋季キャンプの為、阪神ナインが空路高知入り。龍馬空港では、故郷に指揮官として凱旋した藤川球児監督が地元の大歓迎を受ける。
若き新指揮官は、今キャンプのテーマを『没頭』と定めた。「一心不乱に!…特に若い選手が、周りが見えない位の集中力」で野球に打ち込む姿勢を思い描く。「うまく取り組めないような選手は(ファームの)平田監督も『いつでも帰してくれ』と。気持ちがない選手に(対して)コーチに、首根っこ捕まえて何とかしろ!とは、正直言う気はない」。穏やかな表情から発せられる厳しい言葉に得も言われぬ迫力があった。
野球は間のスポーツ
11月1日(金)高知県安芸市で秋季キャンプがスタート。雨の中で歓迎式典が行われたが、練習は安芸ドームなど室内で進行される。ブルペンにはストライクゾーンの高低に2本のゴム紐が張られていた。より高さの意識を持って練習する狙いで過去にも例はあるが、これも藤川イズムを反映したものだ。
指揮官として迎えた故郷でのキャンプに新監督の胸は高まる。「テーマに『没頭』を掲げているけど、練習の合間は少しリラックスして全然構わない。野球は間(ま)のスポーツ。プレーが止まるから。その一瞬一瞬、スイッチが切り替わる選手の表情とか、そう言う瞬間を見ている」と話す。「ここから17日間磨いていく。その中で決して折れる事なくやって欲しいなと思う。ギリギリの攻め際にしないと。(公式戦の)大事なところで(力を発揮する)という選手を求めている。ギリギリ一軍の端っこで、というのは求めてないので…」。
視界良好な船出
2日(土)西日本、東日本共に鉄道がストップする程の大雨に見舞われた連休初日。安芸も終日の室内メニューとなった。
ブルペンでは、中川ら若手捕手陣に指揮官がバッテリーコーチを通じて注文をつける。「ファームで要求されるゾーンというのは、一軍では通用しないと思うんで。要求する精度の高さを上げておく。一軍では投手の精度も高いので、そのゾーンに構えて、そのゾーンにもらうように。(一軍の投手が)構えた時に投げづらいと思われるともう損なので。ボール1個の出し入れ、ほんの少し低く高くっていう要求のレベルになってくるので」。プロの第一線で長く居続けて来た猛者だからこそ気づく事なのかも知れない。
3日(日・祝)前日までとは一転して天候に恵まれた文化の日。藤川阪神初の実戦となる紅白戦が行われた。先発投手は伊藤将と門別。白組4番の井上はファーストを守る。佐藤輝・前川が両軍の2番に配置されるなど興味深いオーダーとなった。試合は特別ルールで6回まで行われたが、0対0のスコアレスドローで終了。白組先発・伊藤将が2イニングを無安打無失点と抑えて貫禄を示すなど投手陣が軒並み好内容を見せる。育成ベタンセスは球速表示で161km/hを計測する豪速球を投じて6,300人の観衆を喜ばせている。
「彼はずっと育成選手で、地道にファームの投手コーチがゆっくりゆっくり日本の野球を教えて来て。最後に見せた(投ゴロ併殺時の)スローイングも、ドミニカで見た時には出来なかったけど、それも出来るようになって来てて…凄く成長を感じる一瞬だったし」。ベタンセスの成長ぶりに指揮官は目を細める。「マサシ、伊藤投手もよかったし、全ての投手に共通して言えるのは、課題を克服してるというか、この秋季練習から秋季キャンプの段階では、本人たちに手応えがあるんじゃないかと思う。凄い、素晴らしいコト」だと投手陣全体へも賛辞を贈った。
故郷・土佐から来季への本格的な船出。藤川丸の前方には、栄光へと向かう大海原が視界良好に広がっている。