スローガンに込められた想い<後編>
「二軍とまったく同じように、というのはできないと思っています」
ファームで結果を残したとはいえ、一軍の舞台でそれが簡単に通用するものではないことは重々理解していると矢野監督は語る。“超積極的”、“あきらめない”、“誰かを喜ばせる”というコンセプトは踏襲しつつ、1年目のシーズンに臨むと話すが、より具体的に目指す野球といまのチームの課題についても口にする。
「理想としては、打って勝ちたいですね。なぜならそれが、タイガースファンの方が一番盛り上がってくれるというのがわかっているからです。あくまで“理想”としては、そういう野球をしたいと思っています」
あくまで理想、と監督は譲らない。しっかりと現状を把握しているからである。
「ただ、現状の自分らのチームというものを考えたときに、バンバン打って勝てるチームになるのかというとそう簡単ではないと思います。いまのチームが勝つ、優勝というのを目指していくためには、投手力を中心とした野球をしていくというのが、合っているんだろうなと思っています」
戦略面では、色を出していくつもりだ。
「動きのある野球をしたいと思いますね。それは足を使うとか。あとは選手自身がどう考えてプレーするかというあたりの動きもほしいなと思いますね」
選手たちが自ら考え、動く。“自主性”を高めるというのも、矢野野球のひとつのキーワードといっても良いかもしれない。
「一年間二軍監督をやって思ったのは、『僕が何もしないで戦える』というのがある意味、一番理想的だということです。僕が経験したことや、僕の野球観とかはこれから伝えていくことになりますが、常にみんなで同じ方向をみて、プレーできていれば、こちらから無理に指示することはないと思っています」
選手たち自身が勝つために考え、行動できる集団にする。いままでがそうじゃなかったわけでは決してないが、より極めることが矢野阪神の目指す野球となる。
加えて、「僕が一番やりたい」と語るのは、チーム内競争の過熱だ。
「競争をどれだけ激しくできるか、というのも強く意識しています。若い選手が出てくれば、孝介や嘉男、鳥谷や球児、能見といったベテランも黙っていないでしょう。強いチームはチーム内の争いが激しくなっている」
競争が生む相乗効果が起こせるかが、チームの世代交代の鍵だ。自分の経験も交えながら、ベテラン選手たちについても明言してくれた。
スローガンに込められた想いショートver<後編>終了。
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