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FARM JouhoukyokuCOLUMN INDEX

Vol.2011-5 ピンチはチャンス!!


柴田講平 選手

今から4年前の2007シーズン―。タイガースは4月から5月にかけて9連敗を喫し、交流戦でも9勝14敗1分の10位と低迷。借金は最大9まで膨れ上がっていた。その原因は先発投手陣の崩壊と、アンディ・シーツ選手、今岡誠選手、濱中治選手、関本賢太郎選手が不調、矢野輝弘(燿大)選手、赤星憲広選手がケガで離脱し、深刻な得点力不足に陥っていたこと。この苦境のなか台頭したのが若い力だった。レギュラー選手のケガ、不調はチームにとって招かれざる事態だが、控え選手やファームの選手たちにとってはレギュラー奪取、一軍昇格の最大のチャンスとなる。シーズン開幕から一軍に定着していた林威助選手、狩野恵輔選手をはじめ、桜井広大選手、坂克彦選手、庄田隆弘選手、藤原通選手ら鳴尾浜で出番を待ち望んでいた選手たちは、ここぞとばかりに一軍に昇格し、チームに新風を吹き込んだ。この苦境を乗り切ったタイガースは、後半戦に入ると10連勝で一時首位に立つなどペナントを大いに盛り上げた。この快進撃の最大の要因はJFKら鉄壁のリリーフ陣だったが、彼ら若い力でチームがギリギリのところで踏ん張り、反転攻勢のきっかけとなったのも事実である。


上本博紀 選手

そして今シーズン―。開幕からひと月以上が経過したが、タイガースは3試合連続完封負けを喫するなど、チーム打率.289を記録した昨シーズンが嘘のような得点力不足にあえいでいる。さらに襲った鳥谷敬選手、平野恵一選手、大和選手、坂選手と相次ぐ二遊間の故障。このピンチにチャンスを掴んだのはやはり若い力だった。大和選手のケガで緊急昇格した上本博紀選手は、5月15日の中日戦(甲子園)で鳥谷選手の負傷退場による緊急出場にもかかわらず、勝ち越しタイムリーを含む2安打1打点の大活躍。以降、鳥谷選手の代役として懸命なプレーを続けている。また上本選手とともに一軍昇格を果たした柴田講平選手はプロ初安打を記録し、平野選手の負傷を受けてルーキー荒木郁也選手も一軍昇格。いずれも守・走を売りにする選手たちで、このタイプの選手が一軍に昇格しやすいことは確か。では、打を売りにする選手の現状はどうなのだろうか?


野原祐也 選手

ウエスタン・リーグ開幕から好調を維持しているのが“虎のアンパンマン”こと野原祐也選手。2009シーズン、育成枠での入団ながらシーズン途中に支配下登録され、シーズン後半には一軍に昇格してハッスルプレーでスタンドを大いに盛り上げた。昨シーズンは右手有鉤骨骨折などの影響で一軍出場はなく、不本意な一年となったが、今春キャンプからずっと取り組んできているアッパースイングの矯正が功を奏し、ウエスタン・リーグで規定打席不足ながら打率.321(5月26日現在)と高打率を残している。さらに取り組んでいるのがフルスイングしすぎないこと。フルスイングは野原祐選手の代名詞でもあるが、八木裕ファーム打撃コーチは「(フルスイングは)いいことなんだけど、力を入れすぎると無茶振りになる。振るということにとらわれ過ぎ。上手くミートを心がければ、彼のパワーなら芯に当たれば飛んでいくんだから」とバットの芯に当てることを優先。野原祐選手も「どんどん上手くなりたいというのがありますし、結果にもつながっているんで」と貪欲に取り組んでいる。一軍初昇格を果たした一昨年は、そのプレースタイルや持ち前の明るいキャラクターからチームのムードを一変させただけに、一軍に昇格すれば面白い存在になる選手。「一軍に呼ばれてもいいように準備して、やるべきことをしっかりやりたい」と決意を表した。


野原将志 選手

昨シーズンはウエスタン・リーグ最多タイの103安打、打率.303、7本塁打という好成績を残し、今年は初の一軍昇格も視野に入っていた野原将志選手が思いもよらぬ不振にあえいでいる。今シーズンはキャンプから調子が上がらず、オープン戦が始まる前にファーム落ち。ウエスタン・リーグ開幕後もなかなか調子は上がってこず、打率も1割台に落ち込んでいた。この不振の原因について本人は「技術的には(春季キャンプ時から)バットをこねてて。分かっていたけど修正できませんでした」と分析。状態が良化しだした4月以降も捕えた打球が野手の正面をついたりすることも多く、「何かが足りないんじゃないか」と思ったりもしたそうだが、「タイミングを取って、来た球を前で打つ」とシンプルに考えた結果、バットをこねることもなくなり、5月17日から22日まで行われていたファーム交流戦『みやざきサンシャインシリーズ』では、5試合に出場して打率.381と結果も出始めた。昨年と比べて野手が一軍に昇格しやすい状況にもかかわらず結果を残せていないことについて、「チャンスを掴まないと意味がない。自分の不甲斐なさ、何やってんだろう」という苛立ちもあったという。しかし、「前を向いてやるしかないですし、腐らずやっていこう」と気持ちを切り替えた。さらに「思い切って何かを変えないといけないし、しっくりきている」と昨年と同じようにバットのグリップを再び上げた。昨オフに加入した新井良太選手が一軍でも結果を残し、育成枠の藤井宏政選手も急成長を見せ、つい先日もトレードで黒瀬春樹選手が西武からやって来た。いずれもタイプとしては右打ち、強打の内野手で、ますます競争は厳しくなるだろう。しかし、このまま手をこまねいてるつもりはない。本来の一、三塁に加え、昨シーズンは5試合だったショートのポジションも今シーズンはすでに10試合守り、公式戦では初めてとなる二塁守備にも2試合つくなど、守備のオプションは確実に増えている。あとは自身最大の武器であるバッティングを本来の調子に戻すこと。まだまだ序盤戦。巻き返しはこれからだ。