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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-10 歴史的一戦!プロ・大学交流試合

2011年3月5日、阪神鳴尾浜球場で阪神タイガースにとって歴史的な一戦が行われた。

プロ野球界と大学野球界の垣根を取り払い実現した「阪神タイガース対近畿大学」とのプロ・大学交流試合。これまでは大学の連盟主催の記念試合として、選抜チーム同士が戦う形式で例外的に認められていたが、単独チーム同士が対戦することは日本学生野球憲章に基づいて禁止とされていた。しかし昨年プロアマお互いの立場を尊重し、交流を図る思想が反映された新憲章の施行が決定し、今年の2月16日に日本学生野球協会が運用規則の最終案を承認、試合の開催は大学のリーグ戦の予定が無く、長期休暇のある3月と8月に限られて行われることとなった。

試合前には阪神タイガースと近畿大の監督・コーチ、選手らがグラウンドに集まり記念撮影行われ、スタンドも歴史的一戦を観戦しようと入場制限がかかるほど、タイガースファンと大学野球ファンが集結した。

注目の一戦、先発は今季でプロ4年目を迎える清原大貴投手、この春から4年生となる選手とは同級生となるだけに、プロの意地を見せたいところであったが、初回不運な内野安打などで無死満塁とされると、近畿大の四番・佐野雄太外野手がセンターへ犠牲フライを放ち先制点を許した。

近畿大の先発は今年のドラフト注目選手であるサウスポー・中後悠平投手、先頭の上本博紀内野手に四球を与え、二死2塁からこの日「四番・センター」で先発出場の浅井 良外野手が、カウント3-2からの直球を見事に捉え、左中間に逆転の2ランを放ちすぐさま逆転した。「打ったのはストレートです。(中後投手は)ちょっと変則ですね。でもストレートは速かった。まだこの時期だから分からないけど、変化球が低めにきたら打ちづらいと思います」。


吉岡興志 選手

近畿大は2回表にまたしても清原を攻め3安打を集中し、2点奪い3対2と逆転に成功。2回以降は両チームの投手陣が無失点に抑える緊迫した展開が続き、ネット裏やスタンドがざわつき始めた9回裏近畿大1点リードで迎えた「あと一人」の場面、二死 ランナー1塁から上本がレフトへ起死回生の逆転サヨナラ2ランを放ち、面目躍如の勝利となった。

意地の一打を放った上本は「結果はたまたまホームランになりましたが、自分としては次の打者に繋ぐことだけを考えて振りました。プロ野球のレベルに憧れて上手くなりたいと思う(大学生の)選手も多いと思います。自分もそう思ってプレーしてきましたので、良い事だと思います」と、アマチュア時代の自らの考えを例に挙げ、歴史的一戦を振り返った。

吉竹春樹ファーム監督は「プロのプレーを見せようと思っていましたが、内容的に悪くなり申し訳ないです。大学生の方が元気がありましたし、1球にしがみつ、泥んこになってボールを追う。我々が忘れかけていることを見せてもらった。(大学生の)若い選手が色んな選手を見ることは良いことだし、プロが逆に真似しようと言うことだって良いと思う」と大学との交流試合で、プロ同士の対戦では少ない『ドロ臭い野球』の大切さを再認識したようだ。


藤井宏政 選手

翌日となる3月6日の交流試合第2戦は、近畿大と同じリーグとなる立命館大学との一戦。この日の先発は、今季で育成枠3年目を迎える吉岡興志投手。立ち上がりから安定した投球を見せ、7回3安打1失点に抑えプロの意地を見せた。

また打線では前日まで自身初めてとなる一軍に帯同していた、育成枠3年目の藤井宏政内野手が「2番・ショート」で先発出場し、なんと4打数4安打2打点の大活躍を見せ、立命館大が誇る今年のドラフト候補、山田遼摩投手と2番手・徳山武陽投手にプロに力をまざまざと見せた。「自分としてはそんなに好調と言う訳ではありませんが、やはり一軍のオープン戦に参加し、上の空気を味わえたことが大きいです。練習や試合を見ているだけでも勉強になりましたし、また(一軍に)戻りたいと言う気持ちも大きくなりました」。

そして8回には育成枠2位で入団のルーキー左腕・島本浩也投手が、同級生の一二三慎太投手(ドラフト2位)、岩本 輝投手(ドラフト4位)よりも一足早く実戦初登板を果たした。結果は1回3安打1失点とほろ苦い内容となったが、ネット裏で観戦していた佐野仙好スカウトや、伊藤文隆氏は「投げっぷりが良い。これから身体が出来れば良い投手になる」と好評価だった。


島本浩也 選手

この日は5対2とタイガースが貫録の勝利。プロと大学の交流試合“開幕カード”の2戦は、共に良い刺激を与え、選手個々にとっても収穫の多い一戦となったことだろう。このあと3月15日に明治大学(明治大グラウンド)、16日には東洋大学(東洋大グラウンド)と東京六大学、東都の強豪と2試合を行う。