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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-29 勝利へのスパイスを探せ!若き新棟梁『泰然自若』な船出


和田 豊 監督

「嬉しいとか、浮かれるような要素は何一つありません」。・・・無数のフラッシュと緊張感がニューリーダーの表情を紅潮させていた。猛虎一筋の男が最高指揮官へと昇り詰めた瞬間。心の底から湧き上がる激しい闘志をどうする事も出来なかった。

2011年10月28日(金)、大阪市内のホテル。ドラフト翌日の『大安』に新監督の就任記者会見がセッティングされた。名門タイガースの栄えある第32代監督に選ばれたのは、今季も一軍スタッフだった和田豊前打撃コーチ(49)である。「大役を仰せつかり緊張している。悩んだというか、今季の成績、真弓前監督を退任させてしまった責任も感じていたし、この話を頂いた時もそちらの方が勝ってしまった」。

正式要請を受けたのは、シーズンも押し詰まった10月23日(日)。マツダスタジアムのデーゲーム(広島戦)を終えた夜だった。その時の話は長時間に及び、何度も「ボクでイイのか?」確認したという。現スタッフとしての葛藤が強くあったからだ。それでも引き受ける道を選んだのは、紛れもない『タイガース愛』だった。「子供の頃から野球が好きでやって来たが、どのタイミングかは忘れたけど、ある日自分の中で『阪神タイガース』が『野球』を超える瞬間があった!」。現役17年、コーチ10年。タテジマ一筋のプロ人生が彼のチーム愛を究極まで育んでいた。「現有戦力はしっかりと把握している。1年目からしっかりと勝負したいと思う。強い決意と信念を持って監督業に取り組んで行きたい!」。


坂井信也 オーナー

坂井信也オーナーは、全幅の信頼を口にする。「タイガース一筋、27年間に渡ってチームが苦しい時も良かった時もずっとタテジマ。隅から隅まで良く把握しているし、タイガースへの思いもひとしおだと思う。過渡期にあるタイガースを立て直すに適任であろうと思った」。まさに『信頼に足る人物』だった。世代交代を迫られる等、非常に難しい時期だが、「フロントもしっかりバックアップして、共に戦う」との決意だ。

座右の銘は、これまで『失意泰然』でやって来たが、監督になるのを機に『失意』を外して、『泰然自若』に変えた。どんな状況下でも、どっしり構えて事に当たる態度は普遍でありたい!との気構えだ。キャンプでよく野球談義を和田コーチにぶつけたという南信男球団社長は、「性格的にも芯の強い男。性格のキツさ、勝負師の執念を合わせ持っている」と評する。


和田 豊 監督

「現役終わってからも(野村、星野、岡田、真弓と)4人の監督さんの下で学んだ。一人この人ではないが、その都度そのタイミングでこの監督の対応が出来るように」心掛けている。「ただ、こういう野球をする!というのは選手にしっかり伝えたい」。

「私の野球をごり押しすると言うより、広い甲子園とか今年からの統一球とか、いろんな状況に対応出来るような柔軟な姿勢を持ちたい」新監督だが、具体的に和田野球とは、どのようなものなのか?「ホーム球場の器にあった野球。シーズンの半分は甲子園でやる。広い甲子園で、投手を中心としたセンターラインを強化して守りの野球!・・・これが理想だが、現有戦力を考えるとすぐには行かない。だが、現在の戦力に少しスパイスを加えれば、十分優勝出来る戦力になると思う」。では、その『スパイス』とは何だろう?新監督によると「一年見てきて足りないもの」だという。それは、ドラフト等の補強に加え『アタマの部分』を変える事で改善される。「走攻守(における)基本の部分を叩き込む事で大きく変わると思う」と、『インサイド・ベースボール』を重要視する事でもある。


和田 豊 監督

過渡期と言われる猛虎だが、「まだまだ頑張ってもらう選手もいる。金本を含め、林とか浅井とかに奮起して欲しい。その中で、(ベテランが)いなくなったからレギュラーではなく、競争させながら(実力で)ポジションを獲る」事を次代を担う若手に要求する指揮官。リーダーとして指名するのは、「野手では鳥谷。投手では藤川球児。この辺が中心になってチームを引っ張って欲しい。(今でもリーダーだが)もっともっと前に出て、グイグイ引っ張ってもらいたい!」と、更に強い牽引力を求めた。

ドラフトが終わり、クライマックスシリーズに突入したばかりの野球界。まだまだストーブリーグも含め不確定要素は多いが、「現有戦力はしっかり把握しているので、いろんな意味があるが、今の戦力にほんの少しのスパイスを加えると十分優勝争い出来る!と思っている」と、虎の新しい棟梁は胸を張る。

ファンに対しては、「今年を含めてこの6年間親身になって応援して頂いたにも関わらず、十分な成績を残せなかった。来年勝負をかける位のつもりでやって行きたい!」と語り、決死の覚悟を示した。

「ウチの娘(次女・20歳)が甲子園の売り子を今年一年やって、(スタンドでファンの厳しい)叱咤激励を聞いて来た。私が(今度は厳しい声を受ける)その立場になるが、悪いものは悪い!と言って頂きたいし、みなさんを喜ばせたい。来年の今頃は、みなさんで喜べるような一年にしたい!」。誰よりも阪神ファンを愛する男の熱い気持ちが、きっと猛虎を目覚めさせるに違いない。