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若トラまとめ 中谷選手

危機感と隣り合わせ

2010年のドラフト3位で阪神タイガースに入団。同期入団の高卒選手は育成選手も含めて6人いたものの、今年のオフには中谷選手と島本投手の二人だけになってしまいました。そういった「プロの厳しさ」は、中谷選手にとっても決して他人事ではなく、ここ数年は現実的な危機感と隣り合わせに何度も試行錯誤を重ね、一軍の舞台を目指す日々が続いていました。

福岡工大附属城東高校時代はキャッチャー。2年までは外野も守りましたが、一学年先輩の梅野捕手が卒業すると正捕手に。タイガース入団後も捕手登録ながら、キャッチャーとしての公式戦出場はなく、その打撃力を生かすために早々から外野手に専念することに。

恵まれた体格を生かしたパワフルなバッティングで一軍予備軍として期待され、高卒野手ながら2年目の2012年シーズンには一軍出場を果たしますが、6試合でノーヒット。なかなか満足に外野へボールを飛ばすことさえできませんでした。

ウエスタン・リーグでもなかなか結果を残せず、4年目の2014年は初めて沖縄春季キャンプメンバーに名を連ねるものの、結局この年も一軍出場の機会は訪れず、ウエスタン・リーグの打率も一割台に落ち込みます。そしてこの年のオフに、同期入団の同級生がまた一人、戦力外でタイガースのユニホームを脱ぎ、同時に同い年でもある大卒選手、江越選手の入団が決定。改めて危機感を募らせた中で、中谷選手は今一度それまでの自分を見つめなおし、奮起します。

原点回帰のフォーム改造

2015年のシーズンは、開幕一軍を果たした江越選手の後を追うように、ファームで結果を残して5月に3年ぶりの一軍昇格。出場2試合目の4月9日広島戦(甲子園)に代打で出場して、今村投手からプロ初安打を記録します。結局、チーム事情もあり、その後は大半がファーム暮らしとなりますが、ウエスタン・リーグでは16試合連続安打を記録するなど、ヒットを追い求め、チームトップとなる打率(.290)を記録。秋季キャンプでも紅白戦でホームランを放つなどアピールを続けます。迎えた2016年も元旦から無休でトレーニングに励み、一軍沖縄キャンプに召集されます。

しかし、沖縄では一軍に残るだけのアピールはできずにキャンプが終わると再びファームへ。シーズンの開幕は今年もファームで迎えます。そしてファームでは掛布ファーム監督曰く、レベルスイングのバランスを崩していた、というバッティングフォームを「基本から見直そう」と遠征から外れ、今岡コーチらと共にフォーム改造に取り組むことに。一軍では髙山、横田、江越選手らが結果を残す中、中谷選手の昇格の機会は6月の交流戦までずれ込みます。

そして6月15日、昇格2試合目のオリックス戦(甲子園)で今季初先発。その第1打席で今季初ヒットを記録すると、19日のソフトバンク戦(甲子園)では代打で登場し、武田投手から左翼フェンス直撃のタイムリーツーベース、プロ初打点を記録します。

[2016年6月19日]7回裏、中谷選手がプロ初打点となるセンターオーバータイムリーツーベース!

中谷選手の魅力は、やはり遠くへ飛ばす力。結果を求めるあまり小さくなりかけていたバッティングを、フォーム改造で本来の姿に戻し、さらに確実性をアップさせます。初打点の翌日からはスタメン起用が増え、6月24日の広島戦(マツダ)では初猛打賞。福留選手が日米通算2000本安打を記録した同カードの2戦目では、岡田投手からレフトポール際へプロ初アーチをかけます。

失敗を糧に

しかしその翌日、6月26日のカード3戦目。7番・センターで先発していた中谷選手に痛恨のエラーが記録されます。
この日もヒットを記録し、守備でもダイビングキャッチで好守を見せるなど、中谷選手にとっては順風な流れの中、迎えた9回裏、同点で二死満塁の場面。左中間に上がった飛球を追い、レフトの俊介選手と激突して落球、サヨナラ負け。俊介選手は担架で負傷退場するという事態に。

声はかけあっていたというものの、地元・広島の大声援の中でかき消されたのか、経験の浅さも影響したのか。「ぶつかっても捕らないと…」と悔しがる中谷選手は試合後、福留選手から「このエラーで今後のプレーが小さくなることのないように」と励まされていました。

幸い、俊介選手も登録を抹消されますが大事には至らず、中谷選手は他の若手選手と併用されながら、打率も8月中旬まで3割超をキープ。一軍に必死でしがみつきます。9月2日のDeNA戦(甲子園)では、ゴメス選手とのアベックホームラン。今季第4号、甲子園での初ホームランを豪快にセンターバックスクリーンに放り込みます。

[2016年9月2日]5回裏、中谷選手のバックスクリーン弾!二者連続となる第4号ソロホームランを放つ!

充実の6年目から

結局、中谷選手は6月の一軍昇格以降、一度もファームに降格することなく、最後まで一軍でシーズンを走り切りました。残った数字は154打数41安打、4本塁打、14打点、打率は.266。守備面も含めてまだ課題は多く、オフに入っても克服のためのトレーニングは続きますが、今年は今後の飛躍のきっかけになる充実したシーズンとなりました。

シーズン終了後、甲子園で行われた秋季練習では、金本監督が自ら手本を示しながら指導にあたり、「フォームに安定感が出てきた」と評価。安芸での秋季キャンプでは昨年に引き続いてサードの守備練習も行い、出場機会を追い求める一方で、休日も返上してウエートトレーニングを行うなど、さらなるパワーアップを図ります。

来季は入団7年目のシーズンを迎えます。一時期の切迫した危機感からは脱出したかもしれませんが、競争相手の数もレベルも年々アップしてきます。同時に近い将来のクリーンアップ候補として、中谷選手への期待も高まります。

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