何とか波に乗ってくれ!
鮮やかに先手を取った阪神だったが、移籍後初登板のベテラン右腕が立ち上がりに乱れて主導権を奪われると、中盤以降リリーフ陣も崩れて大敗を喫した。
巨人から移籍4年目となるDeNA先発・平良。阪神は初回先頭・四球で出た近本が一死後 盗塁を決めると、3番 糸井の左前適時安打で先制のホームを踏んだ。前夜・激勝の余韻を感じさせる阪神の速攻である。
阪神先発は、プロ16年目・通算100勝の中田が移籍後初登板。立ち上がりにいきなり1番 梶谷に右中間二塁打を打たれ、ピンチを迎える。何とか二死まで漕ぎ着けるも、4番 佐野・左越え適時二塁打で追いつかれ、続く宮崎・戸柱にも連続適時長短打を浴びて初回たちまち3点を献上。DeNAにリードを奪われた。3回裏には佐野・四球と宮崎のヒットで無死1・2塁とされるも、一死後 柴田を遊ゴロ併殺に取って失点を免れる。
右横手投げの平良は、両サイドを巧みに使って猛虎打線を翻弄する。4回表は、一死からマルテの右二塁打とボーア・四球でチャンスを作った阪神だが、6番サンズはフルカウントから外角低めを見逃し三振。木浪も一ゴロに倒れて好機を生かす事が出来ない。
5回表に代打が出た為、中田は4回(80球)7安打5三振2四球3失点で降板となった。2回からは何とか粘ったが、やはり初回二死からの連打が悔やまれる。中田賢一投手本人も、「立ち上がりが全てだったと思う。立ち上がりさえ凌いでいれば、球数的にもっと長いイニングを投げることが出来たと思うので、連戦が続く中で早くマウンドを降りてしまった事は申し訳ないし、すごく悔しい」と振り返った。
5回裏には前夜プロ初勝利の伊藤和が2人目で登板するが、四球に4番 佐野の右二塁打が絡んで一死満塁とされ、6番 戸柱が打った高いバウンドの一ゴロで失点。次の1点がDeNAに入って 4対1となった。
DeNA・平良は6回(104球)まで投げて2安打3三振2四球1失点でリリーフ陣へ託す。初回こそ失点したが、丁寧にコーナーを突く勝てる投球でしっかりと試合を作った。
主導権を相手に握られたまま、阪神は防戦一方だ。7回裏には4人目・谷川が一死満塁から戸柱を一ゴロ併殺で二死まで漕ぎ着けるも7番 柴田に右前適時安打。続く大和にもレフト線を破られる2点適時二塁打を浴びて、とどめを刺されてしまった。8回裏には、阪神5人目で今季初登板の福永が登場するも、オースティンの適時二塁打や自らの暴投が絡んで更に失点を重ねる。
福原 忍投手コーチは、「ビハインドで投げる投手が、なかなか粘れていない。そうなると雰囲気も重くなるし、展開的にも厳しくなる。色々考えるけど、なんとか改善していく」と苦悩の表情を浮かべる。
DeNAは7回表を2人目・石田がしっかり抑えて、リードが広がった8回表はエスコバーが今季初登板。9回表途中パットンに繋ぐリレーで、9対1と最後はDeNAが余裕で試合を締め括っている。
前夜の劇的勝利を生かせず完敗の阪神は、これで東都開幕3カード全て負け越し。投打共に本来の調子を依然取り戻せていない。スミ1に抑えられた井上一樹打撃コーチが、振り返る。「(平良には)結果的に低めの球を打たされて、内野ゴロが多くなってしまった。ベンチからも勿論浮いたボールは(打って)行けよと指示は出していたけど、今まで以上に徹底して低めに集められて、それをウチの打線が捉える事が出来なかった」。
「(中田は)いや、球は良かったと思うよ。走りも良かったし。立ち上がりは、みんな難しいからね。二死まで行ったんで。勝負球というのが、佐野やったっけ?ちょっと高く真っ直ぐ行ったのが… 全体的にあそこはコース高く行ったけど、ボール自体は結構良い球が来てたし。あの後、粘ったと言うのも評価出来るしね」。矢野燿大監督は、先発のベテラン右腕を庇った。
この夜も先発に早い回で代打を送らざるを得ない展開になったが、「勿論我慢してやりたいのはあるし。でも(翌日試合がない)日曜日で、チーム状況考えたら、追いつかないと勝ちはないんでね。(打線が低調なので)早めに仕掛けるというチーム状況になってるから」と話して、苦しい胸の内を明かす。好投・平良についての質問には、「相手の事はエエわ!」と珍しく声を荒らげた。もう一週ビジターが続く中で、何とか「波に乗ってくれたらな!」と祈る思いの指揮官。明るい未来を信じて、スタジアムを後にしている。