追撃3ランと気迫のヘッドスライディングを生んだもの<前編>
これ以上ないと思う強い気持ち
2018年シーズンの梅野隆太郎を振り返ったとき、印象に残った試合の一つとして、7月4日に甲子園球場で行われた中日戦が思い浮かぶ。阪神は藤浪晋太郎、中日は大野雄大の両投手が先発した試合だ。
梅野は4点を追う4回裏に、1点差に迫る4号3ランホームランを放つ。さらに5対4と勝ち越した直後の8回2死三塁の場面では、セカンドへの内野ゴロを一塁ヘッドスライディングでタイムリー内野安打にし、勝利の立役者に。お立ち台の上では3ランについて聞かれると「これ以上ないってくらい、強い気持ちを持って打席に立ちました」と答えている。
そのときのことを改めて梅野に問いかけると、2回に先制点を許した場面を挙げて、「なんとか自分のミスを取り返したい気持ちだった」と語ってくれた。これは2回2死一二塁のピンチでセンター前ヒットを許し、中堅からの好返球が本塁クロスプレーになったときのことだ。
「完全にアウトのタイミングだったんです。それを上手くかわされて…」
一旦はアウトになったものの、リクエストで判定が覆り先制点を献上してしまったのだ。
「自分のミスを取り返したいという気持ちが、あのヒーローインタビューでの言葉になりました」
さらに8回の1点リードした2死三塁の場面で、ヘッドスライディングを敢行して内野安打にしたことについて尋ねた。
「キャッチャーというのはネガティブというか、不安なんです。1点でも2点でも3点でも、リードしていても次の回に何があるかわからないと思うと、自分の打席ではランナーを絶対に還したいと常に思っている。そういう積み重ねが気持ちになって出たんだと思います」
梅野の気迫のタイムリーで、タイガースは1点差のゲームをものにしたのだった。
確立された新たなスタイル
6月終了時点で.217と不振にあえいでいた梅野だったが、7月以降は234打数67安打の打率.286とよく打った。変貌を遂げたバッティングについても尋ねた。
「思い切って打ちにいくスタイルに変えたことですね。バッティングフォーム云々というよりも、空振りを恐れるとか、変なボールを振ったらどうしようとかを考えないようにしました」
思いっ切り打ちに行くスタイルで梅野はキャリアハイとなる132試合に出場し、自身初となる規定打席にも到達した。
「自分では思いもしなかったこと」を経験することで、梅野のレベルがまたひとつ上がったことは間違いないだろう。
追撃3ランと気迫のヘッドスライディングを生んだものショートver<前編>終了。
<後編>は11月23日(金・祝)配信です!
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