16年目、秘めたる思い<後編>
プロ16年目を迎えるにあたり、背番号1が口にした“終わり”への意識。決して永遠ではないプロ野球選手生活の中で、もう一度、成し遂げたいとはっきり口にする二文字がある。『優勝』だ。
今から16年前の2003年秋。チームが1985年以来、実に18年ぶりの優勝を成し遂げた歓喜の年に、鳥谷はドラフトで指名され、阪神の一員となった。プロ2年目の05年に、チーム2年ぶりの優勝をレギュラーとして体験している。鳥谷にとって優勝は、ある意味身近なところにあったのだ。
ただ、あれから早10年強。あっという間に過ぎ去っていったときを振り返り、鳥谷は言う。
「プロ1年目は4位に終わって、2年目に優勝したときは、正直、これがどれほどいいものなのか、わからなかったんです。」
黄金時代の到来を感じた2005年、プロ2年目のシーズンを駆け抜けていた鳥谷は、まだ成し遂げたことの大きさを感じる余裕はなかった。しかし年々その重みは増してきた。必ずまたあの感動を。それに挑む、2019年になる。
若返りが進むチームの中で、ベテランとして、優勝を若手に経験させたいという思いも強い。なぜなら、自分がそうだったからだ。
「ベテランの方たちに、“させてもらった優勝”だったというのがあるんです。自分が若い時に、そういう経験をさせてもらったのでわかるんですが、一回経験すると、また経験したいなと感じると思います。それがひとつのモチベーションになると思うので」
05年の優勝を知るのは、現役では鳥谷、藤川球児、能見篤史の3名のみだ。当時のメンバーで現役を続けているのもこの3人だけである。今季から指揮をとる矢野燿大監督も、当時の中心選手として活躍していた立場だが、グラウンドで、自らの背中をもって若い選手たちに伝えられる存在は、野手では背番号1しかいないのだ。
16年目、秘めたる思いショートver<後編>終了。
有料公式サイトでは本コラムのロングverを閲覧できるだけでなく、鳥谷敬選手の直筆サインボールをプレゼント中です!