託す思い<後編>
振り返るはプロ1年目の2006年のこと。リーグ優勝を成し遂げた前05年のドラフトで指名されてタイガースの一員となった左腕は、二人の先輩の姿に影響を受けながら、キャリアを積んでいった。
「まず僕が入ったときにはバリバリのエース格だった、井川慶さんの姿を追いかけましたね。同じ左腕というのはもちろんありますけど、先発完投型で、ああいう投手になりたいなって思いました」
前年、13勝を挙げてチームを優勝に導いた左腕の姿を見て、バリバリの本格派に憧れた─。ただ、すぐに考えさせられることにもなった。
「井川さんのようなピッチャーになりたいって目標を持っていく中で、いろいろと練習していると、『ちょっと自分のタイプとは違うな』って思うときが正直ありました。そんなときに下柳剛さんを参考にさせてもらいながら、自分のピッチングスタイルも変わっていきました」
参考にしたのは、低めに、丁寧にという熟練の投球スタイルだ。「自分が生き残っていくためにどうしたらよいか」をひたすら考えた。当時ソフトバンクの杉内俊哉(現・巨人コーチ)とも一緒に自主トレをさせてもらうなど、様々な投手に触れ、自らの成長の糧にしていった。
そうして紆余曲折しながらたどり着いたプロとして生きるためのカギは、技術面以上に、自身の引退の要因にもなった“気持ち”だったと振り返る。
「どんな投手でも、活躍している人たちの芯にあるのは…」
託す思いショートver<後編>終了。