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変身・藤浪 無念の115球

両先発の素晴らしい投げ合いとなったが、勝負どころで致命的ミスが出た阪神に球運は無く完敗を喫した。

東京ヤクルト先発左腕の高橋に対して、阪神は やや調子を落としている糸井を外し、陽川・近本の1・2番。7番に北條を配して臨む。初回先頭・陽川が中前安打で出塁するが、投ゴロで走者に残った近本が牽制に釣り出されて無得点に終わる。高橋は、2回表も大山・ボーアを連続三振に斬るなど良い滑り出しとなった。

阪神先発・藤浪に挑むヤクルト は、坂口・上田の1・2番。青木・村上を挟んで山崎・宮本・吉田成と7番まで左打者をズラリと並べた。初回二死から青木を歩かすが、4番 村上を真っ直ぐで空振り三振に仕留めて、上々の滑り出しを見せた藤浪。しかし、2回裏先頭・山崎に右前安打を許し、宮本・犠打の一死2塁から今季初スタメンの7番 吉田大成にレフト線へ適時二塁打を浴びて、先取点を与える。二死後、投手の高橋にもヒットを打たれて1・3塁とされたが、1番 坂口は中飛に打ち取った。

高橋は、3回表には植田・四球。4回表は近本・右前安打から走者を得点圏に背負うも、抜群の制球で後続を押さえ込んで危なげない投球。5回まで阪神打線を僅か2安打に封じ込める。一方の藤浪も変化球の制球が抜群で、5回までヤクルトの左打線を4安打1失点。これまでのイメージを一新する安定感のある内容だ。

6回裏 藤浪は、ヤクルト 先頭・上田にライト線二塁打を浴びてピンチを迎える。ここでも変化球を主体に組み立て、3番 青木を空振り三振。村上・ニゴロ。山崎も空振り三振に斬って、見事に脱出した。7回裏には先頭・宮本の遊ゴロを北條がファンブルして、犠打と西田・内野安打で一死1・3塁となる。ここで9番 高橋はセーフティ・スクイズを試みるなどするも空振り三振。二死となるが、1番 坂口の投手返しを右手に当てて一塁へ悪送球。適時強襲安打と失策で痛恨の追加点を許した。

手当てで一旦ベンチに下がった藤浪だが、再びマウンドへ上がると場内から大きな拍手が湧き起こった。次の上田は凡打に打ち取ったが、北條が深追いして近本とぶつかり落球する間に2者が返って決定的な4点目を失う。北條にとっては、最初の失策を取り返そうとする気持ちが強すぎて冷静さを欠いてしまったのであろう。そんな不運が重なり、藤浪はこの回限りで交代。7回(115球)8安打10三振1四球4失点(自責1)は、結果としては悔しさこの上ないが、内容としては本当に素晴らしかった。

勝利に近づいた高橋だが、8回表 阪神も抵抗する。梅野の内野安打と四球・敵失で一死満塁の絶好機を作った。しかし、ここで1番 陽川はニゴロ併殺打に倒れて、得点をあげる事が出来ない。その裏リリーフの小川が満塁のピンチを招き、代打・川端の左前適時安打と坂口への押し出し四球で2点を献上して、完全に勝負あり。9回表ヤクルトは今季初登板の大下に託すが、近本・サンズの捉えた当たりが相手の美技に阻まれるなど流れは完全にヤクルト 。そのまま6対0と完封負けを喫している。

8回(108球)を投げて3安打6三振2四球で無失点と非の打ち所がない内容だった高橋が今季初勝利。今季4度目の先発だが、プロ入り以来でもピカイチの投球と言えるだろう。

藤浪には、悔しい黒星となった。阪神は、勝率5割に逆戻り。歴史的大勝後の連敗だけに後味の悪さが残る。それでも、この試合で見せた藤浪の変身ぶりは、今後の戦いにおいて非常に大きな収獲。立ち上がりは直球で押しまくったが、その後は変化球を駆使してストライク先行で精度の高い投球を見せた。毎回の10三振を奪って四球は僅か1つ。この投球を続けて行けるなら、藤浪が勝てない筈は無い。

長いトンネルは、間もなく明けるだろう。不運にめげる事なく、今後の登板にも同じような気持ちで臨んで欲しいと強く思った。