- 2023.02.03
- 悔いのない日々を
今年も南の島から嬉しい春の便りが届いた。15年振りのアレを目指して始まった新生岡田阪神によるスプリングトレーニング。猛虎ナインの躍動がファンの期待を膨らませる。その前夜から第1クールを振り返る。
1月は早かった
31日(火)岡田監督以下コーチ陣、先乗りで合同自主トレを行うメンバー以外の選手たちが空路沖縄入り。「1月入ってからは早かった。(秋季キャンプの後)明日を待ち遠しくしてたけど、来てしまったね」。全体ミーティングを終えて岡田彰布監督は、率直な思いを口にしている。若くて伸びしろの多い選手たちが、更に成長してシーズンを迎えてほしい、と願っている。
計画として11日の初紅白戦までは、今季のチーム方針に則った連係プレー・サインプレーの練習を徹底的に我慢強く行うつもりでいる。「(期待する選手について)今回は本当に若いチームなので、全員。とにかく大きな怪我とか、そう言うのが無くこの1ヶ月全力で。力を十分発揮して悔いのない一日一日を過ごして乗り切ってほしい」と指揮官は祈る思いを吐露した。
『相応しい』どころじゃない!
2月1日(水)、6日から始動する西武を除くNPB11球団がキャンプ・スタート。宜野座村野球場では、2003年から始まった阪神キャンプが丸20年経った記念に晴天の下モニュメントの除幕式が行われた。コロナ禍で訪問がままならなかったファンもスタンドに詰めかけ、華やかなムードの中で鍛錬の日々に突入している。
メイン球場のシートノックには、新外国人野手のノイジー、ミエセスも張り切って初日から参加。ノイジーの送球を見た岡田監督は、「結構投げてたね。(ノックには)入らんでエエ言うたんやけど。内野やってたから捕ってから早いと言うか、スローにしても」と目を細めている。
ブルペンには、プロ15年目を迎えた西勇が一番乗り。岩崎や個別練習で投げた青柳と外国人を除く投手陣殆どが初日から本格投球を行った。第4クールの紅白戦(11、12日)までは個人の考えに任せる方針だが、指揮官は昨季トミー・ジョン手術から復活して今季は完全ローテ入りを目指す才木の投球に仰天。「才木、よかったな。(初日から)投げられるというのが凄い。下から見とっても角度あるよ。身長も高いしな。西純とちょっと違ったボールの質だわな。スピンの利いた」。記者から「ローテーションに相応しいか?」と問われて、「いや、相応しいどころじゃないんちゃう?あのボール見たら」と手放しだった。
才木浩人投手は、「自分の中ではあまり力を入れてなくて7~8割位の感じで投げていた。だいぶ良い感じ」。自身テーマにしているのが、回転軸。「手首がちょっと寝て横振りになってるのが去年のボール。今年はちゃんと上から叩けて、綺麗にかかっている球が結構多かったので。自分の中ではプラスかなと。(この直球なら)ベース板あたりが強いと思う。差し込めるのでファールも取れるし、次のフォークも生きてくる」と手応え十分な様子だった。
侍ジャパンでも活躍が期待される湯浅京己投手も順調ぶりを示した。精力的にダッシュを繰り返すなど急ピッチで追い込む姿は、「(代表合宿までの)2週間しかこのキャンプにいないけど」その間にしっかりと体作りをしておきたい思いから。ブルペンでもWBC公式球を使用しているが、「(フォークは)多少ボールが大きいので握りとか確認しながら」徐々に精度を高めて行く。これまで故障に苦しんで来ただけに、キャンプ地にも手足のマッサージ器、電気治療器具など多数を持ち込みセルフケアに万全を期す湯浅。「怪我だけはせずにWBCに臨みたいし、シーズンも一年通してやりたい。体作りはこのオフしっかりやって来たつもりだし、この期間も継続してやって行きたい」と話していた。
「アップから走る姿とかキャッチボールとか、そういう面で(選手たちが準備を)ある程度やって来たように見えたけどね」。初日の印象を岡田彰布監督は、肯定的に捉えていた。
「佐藤(輝)はちょっと変わったような気はするな。今岡とも(話して)もうちょっとポイントを良くしたら、というのはあったけど…。バットの出は良くなってる」。佐藤輝の打撃に関しては、もっとポイントを前にするよう注文をつける。「簡単に言うたら刺されて打つのはしんどいて。ポイントが悪いからよ」。ポテンシャルの大きさ故にサトテルへの注文は、期待度の裏返しと言えそうだ。
改めて初日の手応えについて次のように話した。「継続で秋からやろうとしてる事。守りの部分では結構良かったんやないかと思う。これから連係とかサインプレーとか投内のシフトとか、細かい事もやって行かなアカンからな。そういう事を含めて完成したチームにはならんよ。いつもキャンプ(の自己採点)は80点。後はシーズンに向けて、まだまだ伸びしろのあるチームだから、キャンプでも100に持って行く必要ないし、100に出来ないと思うしな。やっぱり相手がいてる事だから。ある程度完成に近い、そういうチームになればエエけどな」。
ウルトラマンの片鱗
2日(木)初めて沖縄でキャンプを行うファームは、うるま市具志川球場で2日目の練習を行った。右足肉離れの影響で新人合同自主トレは別メニューとなり出遅れたドラフト1位・森下翔太外野手だが、この日はブルペンで投手の生きた球を観て感覚を研ぎ澄ますと、メイングラウンドのランチタイム特打では左中間へ特大の打球を飛ばすなど順調な回復振りをみせた。「マシンだったけど感触は良く、足も全然大丈夫な状態でバッティングが出来たので、よかったかなと思う。10割で打った訳じゃなかったけど、打球が柵越えてくれるんで!」。本人も気持ちよさそうに振り返っていた。
ファームの和田豊監督も、「まだ5分6分位しか仕上がってない中であれ位の打撃が出来るというのは非凡なモノを持ってると思う」と目を見張った。「ただ、まだ段階を踏まないと行けない事は沢山あるし。練習の体力というかね。今日も、ウルトラマンじゃないけど3分位しか持たなかったから。あとヘロヘロやったもん、カラータイマーやで(笑)サク越えも3分位まででバテてたから、その体力をつける、取り戻すという事が先決だとは思うから」。万全な形で一軍へと送り出すまで、一つ一つ慎重にステップを踏んでいく事の重要さを強調している。
宜野座では野手のノイジー、ミエセスに加え、この日初ブルペン投球を行ったK&B両ケラーとビーズリーの外国人選手計5人が、キャンプ恒例節分企画の豆まきを行い日本文化に触れた。「今までやった事が無かったので新鮮だった。幸運が訪れるよう願っている。僕もミエセスも本当に日本の文化をリスペクトしているので」。シェルドン・ノイジー外野手が感想を述べた。また、初の休日となる3日の過ごし方に関しては、「リラックスするのが一番。ホテルの周りやビーチを歩いてみたい」と答えている。
また、昨季投手3冠のエース青柳もキャンプ2日目に全体メニューとして初めてのプルペン。まだまだ試運転の段階とは言え、実績も貫禄も十分なだけに、開幕投手大本命の座は揺るがないだろう。
日程の都合で第1クールは異例の2日間となったが、岡田阪神は話題満載のスタート。今後どのようなニュースが出て来るのか?悔いのない日々へ期待は膨らむばかりである。