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榎田、バレンティンに日本新となる2本塁打

日本プロ野球の歴史的な夜となった。

東京ヤクルト・バレンティンが初回の打席で阪神先発・榎田の外角球を捉え、左中間に弾丸ライナーで飛び込む先制の56号3ランを放った。「どの球種を打ったのか?分からないくらいに興奮している!」と話したウラジミール・バレンティン外野手。シーズン最多本塁打の日本新と言う球史に残る一発を打たれたショックが覚めやらぬ榎田は、更に相川の右二塁打などで一死満塁とピンチを迎えるが、8番川島を三ゴロ併殺に打ち取った。

この日は前夜の退場処分(今季2度目)を受けてマートンが出場停止(1試合)となり、阪神は移籍後初めて3番に福留を起用。新井貴が5番に回るオーダーで新人王と最多勝のタイトルを目指す東京ヤクルト小川に臨んでいた。1回表に西岡がプレーボールの初球を左中間に運ぶ二塁打で出塁。柴田が送った一死3塁から福留はセンターフライを打ち上げる。犠飛には十分な距離に思われたが、走者の西岡はスタートせず先制機を逸したのが後々響いた。

怪物を目覚めさせてしまった榎田は、3回にもバレンティンに内角変化球(スライダー)をレフトポール際へ2打席連続の57号ソロを浴びる。更に6番川崎にもプロ初打点となる左中間適時二塁打を許し、心の整理がつかないままに降板した。榎田大樹投手は2回2/3(54球)を投げて、7安打5失点。「早い回でマウンドを降りることになってしまい申し訳ない」という短い談話に却って悔しさが漂う。

バレンティンの記録達成が球場全体の雰囲気をガラリと変えて、阪神はその空気に呑み込まれてしまった。ヤクルト小川は味方の強力援護に気を良くして、相手のタイミングを巧みに外す独特の投法が冴え渡る。苦手にしていた阪神相手に106球6安打5三振1四球で見事完封。ハーラートップタイの14勝目をマークした。

渡辺・筒井ら阪神リリーフ陣は後半にも飯原の2ランなどで失点を重ねて9対0と一方的な試合となって、完全に記録の引き立て役になってしまった。マートンを欠いた打線だが、西岡は相性の良い小川から積極打法で3安打を放ち、6試合連続マルチヒットと好調を持続。連続試合安打は13で止まった4番鳥谷だが、四球を選んで連続試合出塁は47で継続となっている。

大記録を打ち立てたバレンティンは、「身震いするような最高の瞬間。自分のチームが劣勢なのに祝福してもらえる特別な瞬間だった!」と本塁打日本新を一緒に喜んでくれた阪神ファンにも感謝のコメントを残している。

「あれだけ良い状態の打者にコントロールミスしているようじゃ、勝負にならない!」。打たれた榎田を厳しく一刀両断した指揮官だったが、この3連戦 可能な限り堂々と記録男に勝負を挑んで行く阪神投手陣の姿勢は本当に立派だった。胸を張って欲しい。

むしろ問題は2試合続いて完封負けの打線にあるのは明白だ。「初回のチャンスを逃した…それだけじゃないんだ。打線は何かをずっと引きずっている感じがする。根が深いな!」。和田 豊監督が眉間にしわを寄せる。苦悩の長いトンネルは、この『特別な夜』でオシマイにしよう。