清原大貴 選手
ミスも目立つが、思いっきりが良く生き生きとしている。社会人の強豪クラブとの育成試合で若虎たちが躍動した。
6月12日(土) 梅雨入り目前だったが、鳴尾浜は雲一つない「ピーカン」。若人の志の如くどこまでも高く青空が突き抜けている。
今季も年間に渡ってプロアマの垣根を越えた練習試合が積極的に組まれているが、この日はファームの若手主体メンバーと奈良県・大和高田クラブが実戦で腕を競った。
後攻リードでも九回裏まで行うなど特別ルールでの練習試合だが、クラブチームには明日のプロ選手を目指す若者も多く決して侮れない相手だ。実際勝つには勝ったが、スコアは9対5。内容的にも『圧勝』とはいかなかった。
高田周平 選手
近年プロ12球団が積極的に推し進めているこうした取り組みについて、吉竹春樹ファームディレクター(球団本部育成部課長)は、「(育成部門の強化は)今年のウチの方針だから。(ウエスタンリーグの公式戦への)出場機会の少ない選手を優先してる」と話す。
大和高田クラブについては、「去年もやってるし、なかなか力のあるチーム。油断したらやられる」相手であり、スパーリングパートナーとして申し分ない評価を示した。
先発マウンドに上がったのは、ドラフト1位ルーキー二神一人投手。即戦力と期待されて、キャンプから必死に飛ばしたからか、3月オープン戦の最中に左脇腹(内部腹斜筋)を痛めて開幕ローテーション入りを断念した。また地道なリハビリテーションから始めて、実戦復帰したのが、6月4日 日本プロスポーツ専門学校との育成試合。中継ぎで1イニングを3安打2失点だったが、「結果は満足出来ないけど、ゲームで投げられた」事を喜んだ。ただ、「ケガをした事があって(自分でも知らず知らず)怖さというか、気付いてないところが(元々のフォームと)変わって」いた事から、4日の登板後、遠山獎志育成コーチとフォーム修正に取り組んで来た。
吉岡興志 選手
そして、この大和高田クラブ戦に故障後初めてスターターとして、予定の3回(61球)を投げ、味方のエラーも絡む5安打4失点で降板した。『強いボール』を一つの目標に掲げていたが、この日の最速は141km/hとまずまず。本人は、「出来た事は部分的。(修正点の)全部が全部じゃないけど、出来て来ている。3イニングだけど投げて収獲」の手応えをそれなりに感じている様子だった。
しかし、中西清起ファーム投手コーチは及第点を与えない。「まだまだやなぁ。本隊で放らすには、まだ怖い。もうちょい投げ込まなアカンな。真っ直ぐに強さが欲しい」。次回も育成試合でイニング数を延ばして調整させる方針を示した。ファームの平田勝男監督も、「まだまだだな。実戦不足、投げ込み不足。その段階で行ってるから、(結果も)そう簡単にはイカンよ。徐々にね!徐々に」…道半ばの厳しい表情だ。
二人三脚で復活の道を探る遠山育成コーチも慎重な姿勢を崩さない。「(二神は)いろんな課題がある。故障してからフォームが変わって来てるし、まだまだこれから(課題に)じっくり取り組んで、カタチとか身体の強化してから…(牽制やコントロールの精度を上げたり、やるべき事は多いが)まずは上から叩く強いボール」を二人で時間をかけて取り戻しに行く。
田中慎太朗 選手
リリーフ登板の清原、吉岡、高田は各2イニングを投げた。清原と高田は無失点だったが、右肩を痛めて3月28日以来の実戦登板となった育成枠の吉岡興志投手は、わずか7球で6回を3者凡退に抑えた後、7回に長短打と犠飛で1点を献上した。(最速は140km/h)「思ったより緊張した。ボールは全然…高めに来てました。真っ直ぐのキレは良かったと思う」。久々実戦の汗を気持ち良さそうに拭っていた。
4番を打った森田一成内野手は、本塁打と二塁打2の5打数3安打3打点と大暴れの一方で、直接失点につながるエラーを記録。試合後は特守でこってり絞られた。持ち前の明るさでニコニコしながらも、「今日はもうやめて下さい!」と気の利いたコメントはなかった。
同じ育成枠の田中慎太郎選手も、二塁打2本と打撃は良かったものの、レフトの守備(判断ミス)や走塁面で不味さを露呈。三塁打となった打球処理を「めちゃ目測誤ったですね!」と素直にして、中村豊ファーム守備走塁コーチと一緒に反省点をおさらいした。
森田一成 選手
それでも、好調な打撃については、「引っ張りに行ってない。センター中心に行ってくれてる」とその要因を分析。「今日(ヒット)2本でしょ?エグいでしょ!この3試合」とニッコリ笑う。とにかく前向きな姿勢だ。この日も途中からついたファーストの守備では、打球に飛び込んでユニフォームはどろどろだったが、「必死にやるところがプレースタイルなので」とひたむきな気持ちを持ち続けている。この選手の何よりの魅力と言えそうだ。
他の若虎たちも然り。やはり、実戦機会の豊富さが成長を促すのは間違いないと言えるだろう。たとえ失敗しても学ぶ事は多いはず。ファームのさらなる充実を目指す球団は、今後とも海外への新たな選手派遣なども含めて下部組織の強化に心血を注いで行くという。生え抜きプレーヤーで常勝チームを築く事こそ、マンモススタンドを埋めるファンに対する最大の恩返しとなるのかも知れない。