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Vol.2011-6 オレが一軍の危機を救う!若虎、聖地で吠える

堂々たる風格だった。落ち着き払ったマウンド捌き・・・聖地の空気を鄭凱文(ジェン・カイウン)は、完全な自分色に染めていた。

6月8日(水)、阪神甲子園球場で、ウエスタン・リーグ公式戦が行われた。試合前の時点で、阪神ファームはちょうど50試合を消化して、21勝21敗8分の勝率五割。首位ソフトバンク、この日の相手である2位中日に次ぐ3位につけていた。甲子園で行われるファームの試合では、今季も若虎ナインによるファンサービスが幾つか企画されていて、開門時には蕭一傑投手と島本浩也投手が入場するファンを握手で出迎え、日頃の声援に感謝の意を表した。


鄭凱文 選手

そんな猛虎党を喜ばせたのは、先発・鄭凱文(ジェン・カイウン)投手が演じる非の打ちどころがない投球だった。従来よりも腕の位置を下げたプロ3年目のサイドスローが、持ち味を遺憾なく発揮する。立ち上がりから最速146㎞/hの直球に絶品の変化球を織り混ぜて、怪力グスマンや『恐竜のタマゴ』たち(中日打者)を面白いように翻弄。この日もゼロを重ね、5回(58球)を打者15人から全てアウトを奪う『パーフェクト』投球だった。鄭は、これで公式戦20イニング連続無失点。防御率1.37と、リーグトップの座は不動である。

「完璧でした!」。こんなフレーズは滅多に口にしなさそうな中西清起ファーム投手コーチが、手放しで称える。「真っ直ぐが切れて、変化球も良かった。(58球と)本人は物足りなさもあったと思うが、彼に関しては上(一軍)からこういう(先発・中継ぎのどちらも出来るような)使い方をしてくれ!と言われてるので・・・」。

通常なら一軍で投げていても全くおかしくない内容だが、鄭投手の場合は外国人枠の問題があって、現状メッセンジャー、スタンリッジがローテーションで回る一軍昇格のハードルが高い。春先から好調を維持して来ている鄭とは言うものの、「モチベーションを持ち続けてのも難しい。良いタイミングで(一軍に)上がれるかも分からない。前回の若竹みたいに・・・」と中西コーチが、ファームならではの悩ましさを語る。「(いつ昇格出来るかは一軍の都合次第なので)こっちは、投球スタイルしかアドバイスしない。早め早めに次の登板を言ってあげて」ベストを尽せるように最大限配慮する。あとは「投球技術と内容に関してだけ(本人と話す)。(鄭が好投を続けているのは予定投球回数を)逆に5回で切ってるから、イイのかもしれない」などと話した。

「(今日の登板に際して)中西コーチから言われた課題は、(1)緩急のコンビネーションを使って投球すること、(2)ストライクゾーンを広く使って打ち取ること(の二つ)だった。それが上手く出来た。ストレート、スライダー、チェンジアップが思ったところに投げられた」。鄭は淡々と自らの登板を振り返った。あとは、一軍に呼ばれた時に今の力をそのまま出せるかどうか?だけの問題。その時は必ず早晩やって来る。


岩本 輝 選手

鄭のあとを繋いだのは、高卒ルーキー(ドラフト5位・南陽工高)・岩本輝投手だ。育成試合には投げていたが、ファーム本隊の公式戦はこれが初登板。しかも舞台は甲子園を首脳陣は用意してくれた。昨年夏の高校選手権・中京大中京戦以来となる聖地での登板にも気負いはなく、最初の6回は3者凡退のスタートだったが、次の7回、大島、中田亮に痛打を浴び、ピンチでグスマンを迎えたところで交代となった。結局リリーフした石川が逆転を許して、1回2/3を2安打2失点となった岩本だが、『プロ初登板』はまずまずの内容だった。

「(登板は)昨日言われた。ストレートも空振りを取れたし・・・やっとプロ相手に投げる事が出来た」。充実の表情で岩本は質問に答えていた。

中西コーチも一定の評価を与える。「岩本は、(中日の打者に)憶することなく投げ込んで行ったところに若さ(の良さ)が出てた。セットポジションでちょっと球速が(落ちる)と言う課題もあった」。スタンドから視察の同級生・島本にも刺激になったか?と問われ、「そうですね!」と大きく頷いた。今後の登板予定についても「育成試合もあるけど、こっち(ファーム本隊の試合)の数が増えて来る」と将来のエース育成に手応えを口にしている。

「セット(ポジション)の投球が課題と、中西さんとも話した。(今後の登板に向けて)まず、ゼロで抑える!3人で終わる!と言うのをしっかりやって行きたい」。恵まれたデビューを礎に青年はさらなる高みを目指す。


ロバート・ザラテ 選手

9回には、育成の秘密兵器とも言える新外国人左腕ロバート・ザラテ投手が、甲子園デビューを果たした。2月の安芸ファームキャンプ中に故障。『左上腕二頭筋の軽度挫傷』で出遅れたが、その後は順調に回復し、段階を踏んで公式戦登板まで漕ぎつけていた。この日は3度目の登板だったが、前回4日のオリックス戦(神戸サブ)では、一塁走者に11回も牽制球を投げて、「(リズムが崩れて)野手が嫌がるから」控えるよう首脳陣から注意を受けていた。

この試合では、2安打を許し走者を背負う場面もあったが、それほど執拗に牽制することもなく、ピンチをしのいだ(1回無失点)。長身から角度のある最速148㎞/hの直球は威力十分!まだ粗削りながらもポテンシャルの高さを示す内容だった。「中西コーチは、「(いきなり連打されて)ちょっと入りが弱かったね。3人目のグスマン位から(やっとエンジンがかかった感じ)。探りながら入った」と、注文を付けた。それでも、「ボールの力はあるし・・・」楽しみな素材だけに経験を積むことで大きく伸びる期待は膨らむ一方だ。


川﨑雄介 選手

ザラテの前に投げた川崎雄介投手は、1回1/3(打者4人)をピシャリと抑えて相変わらずの安定感。19試合登板で19イニングと2/3を投げて、4失点。自責点わずか2と、防御率は1を切っている。「頑張ってます。モチベーション上げてます。球種によって(リリースの)高さを変えてる」。・・・昨季途中、千葉ロッテから来たかつての最優秀中継ぎ投手は、静かに逆襲の牙を研いでいた。

「川崎もイイ状態が続いている。左では、今(一軍に推薦する候補の一番手が)川崎。低いゾーンに(球を)集められてるので・・・」。1985年の守護神(中西清起ファーム投手コーチ)も太鼓判を捺した。果たして、次は誰に白羽の矢が立つのか?一軍が苦しい戦いを繰り広げる今季だけに、多士済々の若虎たちから、ますます目が離せない。