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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-8 高濱エエやん!安芸の合同紅白戦で熾烈なサバイバル

太平洋に向かってアーチを描いた!土俵際で生き残りを決める『起死回生の一発』だった。

宜野座キャンプを打ち上げた沖縄組が、高知へやって来た。2月19日からの第二次キャンプ。最初のクールは、ファームとの合同紅白戦が3試合行われた。


高濱卓也 選手

若虎野手で最初にアピールしたのは、4年目の高濱卓也内野手だった。初戦(19日)の2回、白組先発・小嶋から内角スライダーをセンター前へ運び先制タイムリーとするや、その後も藤原のスライダーを攻略(中前安打)、筒井の直球を右中間二塁打と見事な打撃で3打数3安打1打点。紅組勝利の立役者となった。「とりあえずしっかり振って行こうと・・・。真っ直ぐは打てないかなぁ?と思って、ファウルでイイと。変化球を打とう!と(待っていた)。キャンプが始まってから、ずっと左(投手)を打ててなかったので・・・ビックリしましたね!それが一番大きかった」。高濱自身が、最も意外な結果であった。

「ちょっとイイと聴いてたけど、追い込まれて変化球を打てたところが良かった。他の選手、刺激になるよね。今年は元気にやってくれてるのが一番だ」。やはり打撃の職人でもあった真弓明信監督が目を細める。

翌日も翌々日も、高濱は安打を量産して、紅白戦3試合で9打数6安打と打ちまくり一軍キャンプ組に昇格を決めている。名門・横浜高の大型内野手として類稀なるセンスは入団前から高く評価されていたが、両スネ、ヒザ、腰・・・故障に泣かされ続け、これまでの3年は鳴かず飛ばずに終わっていた。ケガさえ無ければ・・・の思いは、誰よりも強い。「技術的な事より身体の事を一番に考えてトレーニングをしていた。自分の中で『今年ケガしてしまったら終わりかな?』と覚悟していたので・・・」。

自らの努力で手にしたビッグチャンスをモノにすべく、26~27日(安芸、春野)のオープン戦(対オリックス)に臨む。「一番は、紅白戦でアピール出来たバッティングでアピールしたい。(背番号が36から66に変わった事について)去年までは大和さんがつけていた印象があるが、今年からは『背番号66は高濱だ』と言われるような活躍をしたい!」。長い雌伏の時を乗り越えて、至福の4年目にしてみせる。


野原祐也 選手

ファームが安芸を去る22日まで4日間の合同キャンプで、選手の入れ替えが行われた。投手では江草と若竹が昇格。野手は高濱に野原祐、狩野の3人が安芸に残る事となった。代わりに筒井、川崎の両投手と野手では野原将がファーム組と共に関西へ戻った。カタチの上では『降格』だが、この時期は教育リーグなどファームでの実戦機会も多く、人数調整の意味合いが強い。

ドラマチックに『一軍行き』を手にしたのは、野原祐也外野手だ。合同キャンプで最後となった21日の紅白戦。9回裏の文字通り『最後の打席』で杉山から右越えにソロ本塁打を放った。前日(20日)の左中間三塁打に続く見事な一撃のその瞬間に昇格が決まったという。

「(本塁打は)真ん中寄りのストレート。(2ボール2ストライクと)追い込まれてたので真っ直ぐ、変化球、両方喰らい付いて行こうと思った」。アンパンマンの愛称にふさわしい笑顔で野原祐は、質問に答えていた。期待されていた昨季は故障に泣いた。「(5月に右手首を手術して)去年一年間何もやってない。今年は手術したところも全く痛くないので頑張りたい」。『劇的な本塁打』は、勝負の世界に生きる者として何かを持っている事の証し。今季の野原祐は、やってくれそうだ。


能見篤史 選手

2月22日(火)ブルペンでは、開幕投手の最有力候補と見られるライバルが鎬を削っていた。この日、久保は304球もの投げ込み。能見も前日の170球に続いて180球を投げてみせた。

20日の紅白戦で共に先発した二人だが、同じ2回無失点でも能見がマートン、ブラゼルに連打を許すなど被安打4だったのに対して、久保は初回先頭の俊介に四球を与えた以外は完璧な内容だった。調整段階でもあり能見篤史投手は、「(打たれた事は)気にしてない。打たれたくはないけど。(久保の)先頭フォアボールはどうか?と思うけどねー(笑)」と淡々としていた。


久保康友 選手

一方、久保康友投手は、「もうちょっと打たれたかった。いつもの練習とは逆になって、スライダーがストライク入って、カットボール、シュートがボールになった。動かしたくないボールが動いたり、その逆もあった。これから投げてみないと分からないところがあるけど、それは武器にもなる。(今季の中心的な配球を)分からない変化をするツーシーム系で行くのか、封印して(球の動きを)計算出来るボールで行くのか?それはこれから」などと話した。統一球の採用で、打球の飛び方は勿論だが、ピッチングにおいても変化球の変化の度合いなどが違って来るという。そうした諸々の事も今後、実戦の中で試したいのであろう。

『開幕投手を争う』とマスコミは煽るが、二人共これについてはそれ程こだわりを見せない。「いつでも行け!と言われれば、ボクは行けるタイプ」と話す久保。近年の阪神キャンプでは異例の球数(304)だった22日の投げ込みについても「ブルペン入って、ボール握った時に、何となく」やっただけだと周囲をケムに巻いていた。


山口高志 投手コーチ

困惑気味の記者に山口高志投手コーチは、「(久保は近年)イチロータイプ。哲学的になって来たから、哲学的な質問しないとアカンよ(笑)」とアドバイス。久保に限らず、特に投手は少なからず『哲学者』なのかも知れない。調整のやり方一つ取っても、似ているようで十人十色だ。今年は、例年ブルペンで多くの球数を放る久保田が、肩を適当に休ませながらスロー調整を行なっている。藤川も、安芸に来てペースを変えているという。「球児はちょっと休憩に入った、肩の方。(本人の)希望もあるし、こっちの要望でもあるし・・・。榎田は、前(先発)で投げる。始めの2試合位は(一軍の)オープン戦で投げさせる予定」・・・山口コーチは、今後の方針を少しだけ教えてくれた。

安芸キャンプも残りわずか。オープン戦、教育リーグの実戦を経て、いよいよ公式戦に入って行く。