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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-16 鳥谷復帰間近! 頼もしきドラ1ルーキー


鳥谷 敬 選手

今年もこの時期がやってきた。「セ・パ交流戦」。パ・リーグの好投手や強打者との対決は、観る者をわくわくさせる。そしてリーグ戦で調子の上がらなかったタイガースにとっては、浮上のきっかけになることが期待される。

しかし、うまく回らない。4カードを消化して、2勝6敗。ホークスとマリーンズには連敗した。昨年「ダイナマイト打線」として打ちまくった自慢の打棒が奮わない。得点が挙がらない。その要因の一つに、鳥谷の故障が挙げられるだろう。5月15日のドラゴンズ戦の初回。ショートゴロをさばいて3アウトとした鳥谷は、右手の指を血まみれにしてベンチに戻り、裏の攻撃で退いた。どうやらグラブの中で跳ねた打球を右手で押さえにいって、人差し指の爪を突いたようだ。それによって爪床裂傷を負ってしまった。要するに爪が肉から剥がれてしまったのだ。しかし爪が完全に取れてしまったわけではないので、付くまでテーピングをして回復を待つことになった。

バッティングは大丈夫だという判断で、ビジター4試合はDHで出場した。一番の心配はスローイングである。人差し指をかけずにコントロールして投げることはできない。京セラドームではさすがにノックを受けるだけにとどまったが、次のヤフードームでは早くも山なりながらキャッチボールを始めた。


鳥谷 敬 選手

甲子園に戻ってくると、状態は日に日に回復が見られ、キャッチボールの球にも段々と力がこもってきた。25日には、練習後にテーピングを外した指を見せてくれた。爪の色は紫色で、周囲を血の塊がぐるりと取り囲んではいたが、指の肉に爪が完全に付いたであろうことが確認できた。練習でもノックを受けてファーストやセカンドへの送球もこなしている。鳥谷という選手は非常に面白い。普通は故障中は気分も滅入るし、ナーバスになる。表情も暗くなりがちだ。ところが鳥谷は逆で、ケガしている時ほどテンションが高く明るい。笑顔も5割増しになる。昨年の指の裂傷の時もそうだった。今回も当てはまる。故障した直後から、ずっとニコニコ。取材に応じている間も、テンションは高めだ。

しかしそれが26日、一変した。それまでのニヤニヤした顔が消え、表情が打って変わって厳しくなった。つまりこれは、全快間近であろうことを意味すると思われるのである。最終判断は当日朝の状態に委ねられるが、スタメン復帰は秒読みとなった。鳥谷が3番に座る打線。1番・平野が当たっているだけに、得点力アップが大いに期待できる。


榎田大樹 選手

低迷する打線とは裏腹に、投手陣は踏ん張っている。防御率もリーグ3位だ。中でも、中継ぎの榎田の活躍が光っている。今年のドラフト1位ルーキーだ。24日のライオンズ戦では、1点リードの場面で2イニングスを投げ、嬉しいプロ初勝利を手にした。「ヒーローインタビューで勝利を実感しました。でもお立ち台は緊張しますね。野球の方がしません。小学校から社会人まで、携わった色々な人達に伝えたいです」。愛嬌のある笑顔で、喜びを表現した。

1月の新人合同自主トレから、並のルーキーとの違いを見せていた。練習の一つ一つのメニューの意味を理解し、その効果を最大限に引き出す動きをする。伊藤トレーニングコーチも、「言ったことはキッチリするし、丁寧にやるね。足りないところは自分で考えて、更にやる。意識が高いね」と頷いた後、「顔に似合わずね(笑)」と付け加えた。開幕前日、「ケガなくここまでこれて、とても充実した期間が送れた。本当のスタートはここから。一日一日を大事にしたい」と語った榎田。ケガをしない為に―と、自身で考え取り組んできた。中でも「ストレッチは特に心がけてますね」という。「練習前や、寮での風呂上がり。肩甲骨周りを伸ばしたり、ほぐしたり。年間通してやることが大事なんで」と自分の部屋で、自ら購入したストレッチポールを使用して励む。「足周り、肩周り…ピッチャーとして大事なところが課題です。身体能力が高くない分、ちゃんとやっていかないと」。自分に何が足りないか、何が必要か、きちんと把握しているのだ。現在の状態を「腕が振れている。しっかり体重が乗せられているから、あまり痛打もない。バッターが遅れたり、詰まったりしてくれている。中継ぎで短いイニングだから、思いっきり飛ばせるというのもあるかも」と分析する。

それでも連投や投げ過ぎは危惧される。「バテてる感じがある時もある」。そんな時は、「とにかく寝る(笑)。あとは食生活ですかね。油ものを摂り過ぎないようにとか。それと、半身浴を2~30分。携帯のゲームしながらね」と、ここも対処法をしっかり考えている。そんな榎田を女房役の城島に評してもらった。まず出てきたのは、「髪型がいいよね。あれ、ずっと変えないのがいいよね(笑)」と城島らしいボケ。続けて真面目に「先発は初球のボールに様子見をしたりできるけど、中継ぎというのは試合の途中から入る。1球で状況が変わる。つまり、1球目からベストピッチをしなくちゃいけないスペシャリスト。彼はずっと先発をしてきたのに、中継ぎで1球目から腕の緩みがない」と、その適応能力を絶賛する。


榎田大樹 選手

城島からも常々「悔いのない球を投げろ」と言っているそうだが、「これは先発に回ったとしても、生きるでしょう」と讃える。今はマウンドで投げることが楽しくて仕方ないという榎田。ただ思いきり投げるだけではない。バッターの雰囲気や状況、カウントなどで、微妙にタイミングを変えることも自然と行っている。「軸足に乗る間とか足の上げ方、踏み出すタイミング。バッター見て、打つ気ないなって感じたり。そのあたりは社会人の経験です。それを買って獲ってもらったと思ってますから!」経験に裏打ちされた自信に胸を張る。

現在、セ・リーグ新人記録に並ぶ9ホールドを挙げ、新記録達成が期待されるが、「別にそこを目指してませんから」と一笑に付す。「ホールドがついて、チームが勝つのが一番。記録関係なく、数多く勝ち試合で球児さんに繋げれば」。目指すのはあくまでも、チームの勝利だ。


榎田大樹 選手

現在リーグ最下位、交流戦順位も最下位のタイガース。しかし交流戦は3分の1を終えたばかり。この先の躍進次第では、一気にリーグ上位浮上の可能性はある。仙台、札幌の4戦で、一つでも多く勝ち星を増やして帰ってきてほしい。