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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-18 右のエース久保が離脱 岩田苦境を乗り越えて鷹軍団斬り


久保康友 選手

虎が低迷している。かつて見たこともないくらい弱りきっている。交流戦に入り、パ・リーグのトップクラスの投手たちに、ことごとくやられていく。打てない。点が取れない。“借金”がかさんでいく。

そしてここへきて、右のエース・久保の離脱だ。「左腹斜筋の筋挫傷」で6月6日に登録抹消。復帰は未定だ。5日のバファローズ戦に先発した久保。初回から全体的にボールが高い。キレも本来のものではない。先頭から2連打を許した後、一死一、三塁から4番のTー岡田に143キロまっすぐをセンターバックスクリーン右に運ばれる。アウトカウントを増やせないまま満塁のピンチを作ると、鈴木のタイムリーと自らの送球エラーで更に2点を献上。

立ち直りを願って送り出された二回のマウンドでも、先頭にヒットを許し、エラー絡みながら2失点。プロ入り最短の1回0/3を7安打2四死球7失点(自責は4)。球数は52球も費やした。通常、降板したピッチャーはベンチで残りイニングを見守るもの。時には声を張り上げ、味方を鼓舞しながら。しかし久保の姿が見当たらない。試合終了後も、ついぞ見かけることはなかった。「早い回に失点してしまい、ゲームを作れなくて、チームに迷惑をかけて申し訳なかったです」。反省の弁を広報に託した久保は、実は病院で診察を受けていた。聞けば、登板前から違和感はあったという。それでもエースの自覚から、何としてもゲームを作るつもりでマウンドに上がった。「どの瞬間になったというわけじゃなく、じわじわきた感じですね」。7日に治療に訪れた鳴尾浜では、意外に明るい表情でそう話した久保。


岩田 稔 選手

リハビリ担当の権田トレーナーによると、まずは一定の安静期間を設けるという。今しばらくは、捻ると多少の圧迫感があるとのことだ。ただし肩周りやヒジ、下半身は衰えないよう、できるトレーニングはしていく。「チューブやダンベルを使ってやります。下半身は軽くバイクをこいで。股関節には問題なかったので」と権田トレーナー。現段階で全治時期は見えていないが、今週末、ある程度患部が落ち着いたところで、キャッチボール時期は見えてきそうだという。「安静にしながら、できることをやっていく」。一日も早い復帰が待たれる。

6月に入っての甲子園4連戦。連日大入り満員ながら、その観客の期待に応えられない。唯一勝ったのが3日のホークス戦。10連勝で乗り込んできた強力鷹軍団を抑えたのは岩田だ。今季の岩田はなかなか勝ち星に恵まれない。7試合に登板して自責点は15点。防御率2.87は先発としてまずまずの成績だ。


岩田 稔 選手

開幕カードのカープ戦から3戦連続で黒星。ようやく初勝利を手にしたのが5月5日のジャイアンツ戦。自身578日ぶりの白星に、お立ち台では思わず感極まった。しかしそこからまた、2つの敗戦。いずれも7回を投げ、自責点はバファローズ戦で2点にマリーンズ戦で1点。先発としての役目は十分に果たしながら、勝てない理由―。それは本人が、一番よく知っていた。「立ち上がり」。6試合目までのイニング別失点を振り返ってみると、初回に失点することが実に4度。そしてその全てが、敗戦に繋がっていた。「スライダーが抜けるんですよね。スライダーさえ低めに投げられれば、何とかなると思うんですが・・・」。

ブルペンでの投球練習では、とにかく低めを意識した。キャッチボールでもフォームをチェックしながら行った。「上に抜けないよう、しっかり叩く。それができれば他の球も生きるし、まっすぐも叩ける」。また登板前の調整法も工夫した。「休み過ぎないよう、早めにアップして体を温めるように」。ホームゲームだと、練習終了から試合開始まで2時間以上空いてしまうのだ。また直前のブルペンでは、通常30球だった投球を10球増やし、40球ほど投げた。その努力はそのまま、気合いとなって試合に顕れていた。先頭にヒットを許し、パスボール絡みで失点はしたものの、1点でしっかり踏ん張った。そして味方が逆転してくれた。七回にオーティズに2ランを浴びたが、榎田、藤川が2点のリードを守りきり、岩田の手には2勝目が舞い込んだ。「今日負けたら終わりだと思った。実績もないんで」。ファーム降格も覚悟して臨んだ試合だった。「初回はいつも以上に慎重になってしまった。今日も点を取られて、それをどう止めるか。立ち上がり対策は、今後も続けていきたい」。


岩田 稔 選手

右の好打者が多い鷹打線に、臆せずインサイドに飛び込んでいった。「そこにいかないと抑えられないんで。今日は全体的にそれぞれのボールが良かった」。しっかりと手応えを掴むことができた。

勝てない期間、「岩田、相当ナーバスになってましたよ。アイツ、Ⅰ型糖尿病の基金に寄付したりしてるでしょ。自分の勝ち星の数でやってるから、勝てないことで自分を追い詰めたり、気負ったりしてるんですよ」。そう心配したのは久保だった。観察力に優れた久保は、岩田にこう話しかけた。「気にすんな。防御率見てみろ。いいピッチングしてるんやから気にすんな。勝ちは必ずついてくるから」。この言葉で、岩田の表情はガラリと明るくなったようだ。

交流戦の日程上、登板機会が空くために一旦抹消されたが、恐らく最短の10日で復帰する。次はまた甲子園でのファイターズ戦。高校の後輩・中田が4番に座るが、先輩の意地を見せつけるつもりだ。