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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-20 投打がガッチリ噛み合い乗ってきた!


新井貴浩 選手

きた!きた!乗ってきた!苦しみ続けてきた虎が、ようやく本来の強さを見せはじめている。最大2ケタまで膨らんだ“借金”を3まで減らし、順位も首位・スワローズに6ゲーム差の3位につけた。打線が息を吹き返し、チーム打率.255はリーグトップだ。変わらず安定している投手陣は、チーム失点数186(リーグ2位)で2.95と、2点台の防御率を誇っている。投打がガッチリ噛み合った今のタイガースは無敵だ。それをシッカリ体現したのがベイスターズ3連戦だった。


上本博紀 選手

初戦は倉敷マスカットスタジアムでのナイター。年に一度開催されるこの地での主催ゲームには、28,000人を越えるファンが詰めかけた。練習中から小雨が降り続いていた為、野手の練習は隣接するサブグラウンドで行われた。練習を終え、本球場に戻る時には大勢のファンから声がかかる。「地方球場はファンと近いよね。できるだけ子供達にはサインをしてあげたい」。大声援に手を挙げて応えながら、新井は勝利を約束した。先手を取ったのはタイガースだ。初回、平野が闘志あふれるベッドスライディングで出塁すると、鳥谷の右前打などで二死満塁とし、関本への押し出し死球で先制。三回に4番・新井のソロで1点追加すると、四回にはマートンからの3連打で2点。そのマートンが五回に2点タイムリーを放つと、次の回には新井が犠飛。更に八回に上本のプロ初ホームランなどでダメ押しの3点。終わってみれば今季最多の17安打で10得点!今季2連敗していた山本に土をつけることができた。


鳥谷 敬 選手

「殊勲賞は鳥谷でしょう」と片岡コーチが讃えた3番打者は4安打。全て右方向への強い打球だった。「最近の鳥谷は一、二塁間の当たりが多くなった。あれを覚えてくれると率が上がる。困った時に狙って打てるようになる」との言葉通り、打率も.283まで上昇した。5月半ばに右手人差し指の爪を痛めたこともあり、本来の力を発揮することができなかった鳥谷が、故障が癒えた今、しっかりしたスイングで結果を残しはじめている。どんな時も早出特打を決して怠らず、またその日の成績に一喜一憂しない。ビデオを見たりもしながら、コツコツと自分の進むべき道を模索してきた。プロのアスリートとしての強靭なメンタリティーが、鳥谷を昇華させている。交流戦最終戦となったイーグルス戦で、永井から放ったセンターオーバーの二塁打。ワンバウンドでフェンスを直撃したその当たり以来、右への強い引っ張りが多く見られるようになったが、本人は「そんなのあったっけ?」と涼しい顔。特に「きっかけの一打」というわけでもないようだ。「最近、右へ出てるけど、元々引っ張ればいいとも思ってないし」と、鳥谷の意識は違うようだ。「自分としては、左中間に打ってる方が安心する。ショートの頭くらいの打球が好き」と言うのだ。「そりゃ、引っ張れてるのは体がキレてるってことではあるけど。でもそれが好調のバロメーターとは言い難い」そうだ。インサイドの速い球を引っ張るスピードとパワーを持ちつつ、様々な投球に対応することもできる鳥谷。3割に乗る日も、そう遠くないだろう。


鳥谷 敬 選手

加えて守備の安定感が更に増した。倉敷での初回、先頭の石川の打球を右へ飛んでキャッチし、しっかりとアウトにした。「飛んできたのは全部アウトにするのが仕事なんで」。サラリと言ってのけるのが心憎い。「守備は積み重ねだよ。今年急に上手くなったわけじゃない。3年間見てきて、オレが伝えたことをしっかりキャンプからやってる。安定感は出てきたね」。辛口の久慈コーチも認めている。「でも欲を言えば、最後のもアウトにしてほしかった。あれはエラーにされてもおかしくない」と、九回の中村の内野安打となった打球に注文をつけた。うまく追いつきながら、一塁送球がやや逸れたのだ。「ああいうとこなんだよ。ゴールデングラブ賞を獲るには」。そう。久慈コーチが求めているのは、守備の最高賞であるゴールデングラブ賞なのだ。もちろん鳥谷本人も、昨季から堂々と公言している。「3割も打って・・・とトータルの評価じゃなしに、ホントの意味で守備だけで獲れるくらいにはなってほしいよね」。可能性があるからこそ、久慈コーチの口調も厳しくなる。

甲子園に戻っての2戦目。残念ながら、鳥谷に今季初めての失策が記録された。三回、先頭打者のゴロに一瞬足が止まり、トンネルしてしまったのだ。「どんなゴロでも、正面のゴロが一番難しいんだ。どこかで安心するからね。動いて捕る分には、イレギュラーがあるんじゃないかと疑いながら動くから。もっと跳ねると思ったのが跳ねなかったから、足が止まっちゃったね」。久慈コーチが解説してくれた。初失策に対して当の鳥谷は「あくまでも個人的なこと」とし、「それよりも回の先頭を出して、メッセンジャーに苦しいピッチングをさせて申し訳なかった」と自分のことは二の次だった。しかしこれで鳥谷への信頼感が揺らぐわけではない。これからもチームを救う好プレーを見せてくれるだろう。


藤井彰人 選手

さてこの試合、ビックリ箱が飛び出した!このところスタメンマスクで存在感を発揮中の藤井が、移籍第1号をレフトスタンドへ運んだ。そして次の打席では何とスクイズも成功させたのだ。お立ち台では同級生の新井から「男前」といじられると、「顔しか取り柄がないんで」と満員のスタンドの爆笑を誘った。連夜の2ケタ安打で快勝。好リードで投手陣を引っ張った藤井が帰宅すると、小学2年の愛娘は既に寝入っていた。「『お守り見たかなぁ』って言ってたよ」。奥さんから聞かされ、藤井はハッとした。6月18日の自身の誕生日に、娘が折り紙で作ったお守りをくれたのだが、「開けたらあかん!」と言われていたので、そのまま大切に鞄に忍ばせていた。実はそのお守り、中に『ホームランが打てますように』と書かれていたのだ。普段から「何してんねん!」と厳しく叱咤激励してくれる娘の気持ちが嬉しくて、翌朝「ありがとう」とお礼を言ったら、「人形は?」と即座に返された。そう。ホームランを打った時に貰えるトラッキー人形を、娘は待っていたのだ。持って帰るのを忘れた藤井は、球場外での“失策”に頭を掻くしかなかった。

初もの、左腕、外国人ー今季苦手とされた先発の条件を全て兼ね備えたゴンザレスを打ち砕き、3夜連続2ケタ安打で3戦目も白星で飾り、これで今季初の同一カード3連勝。5月に3タテを食らったベイスターズに、そっくりそのままお返しをした。この勢いで、5日からは2位・ドラゴンズとの3連戦、そして首位・スワローズとの2連戦へと続く。オールスターまでに“借金”を完済し、上位チームとのゲーム差を少しでも詰めておきたい。