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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-21 いい形で前半を終え勝負の後半戦へ


ジェイソン・スタンリッジ 選手

オールスターブレイク前の大一番となる9連戦。真弓監督は声高らかに「借金完済」を宣言した。“借金”を4まで減らして迎えた9連戦、最初のカードは甲子園球場での伝統の一戦だ。

ジャイアンツとは、リーグ戦再開直後に当たって以来だが、その時の印象を藤井はこう語った。「前回は2勝1敗やったけど、すごく“打たれた感”がある。勝負が早いね。打ってくる。見逃しで取ろうという発想はない。振らせて空振りやファウルを取って・・・まぁ全部が全部、思いどおりにはいかんけど」。敵のスタイルを逆に利用してやる。そんな意気込みで勝負に臨んだ。初戦の先発・スタンリッジは初回こそ二死から長野に被弾して先制を許したが、その後は打たせて取るピッチングで、すいすいと八回まで0を並べていく。七回には来日最速の154キロをマークした。ガッツポーズが飛び出すなど、いつになく熱いスタンリッジ。「大事な試合だし、絶対に落とせない。あまり感情をむき出しにすることはないんだけど、チームは5割という強い目標がある。チームに勝ちが与えられると思うと、あんな風に感情が出た」と試合後も興奮冷めやらぬ様子で話した。

昨年からスパイクカーブが有効で勝ち星を重ねてきたスタンリッジだが、今年はやや少なめだ。「去年はカーブを使い過ぎたんで、バッターの頭に入ってると思うんだ」と分析。「だからカーブ以外の何かで組み立てられるように」と、今年冴えているカットボールやスライダーを効果的に使っている。「カットボールやスライダーはどのカウントでも使えるし、それを基準に面白い組み立てができている」と胸を張る。「より完璧なピッチャーになる為に」―スタンリッジはどこまでも高みを目指す。


新井貴浩 選手

このゲームでは、新井が復調の兆しを見せた。不調から、マートンに4番を譲る格好となっているが、この日は決勝打を含む2安打。アウトになったフライも含め、打球は全てセンター方向だった。「自然とセンター方向にいってる時はいい。狙ってじゃなく、自然と結果的にいってる時はね」。新井の表情にもほんの少し、余裕が見られた。和田バッティングコーチも「状態が悪い時はタイミングがとれていなかった。自分のスイングができなくて、前に飛ばせずファウルが多かった。やっと一振りで仕留められる状態になった」と安堵感を漂わせ、「今日は練習から良かったから。形と結果が伴い始めた」と手応えも感じているようだった。

ただ、すぐに4番復帰かと問われると、答えは「ノー」だ。「打順を変更するのは、苦しい決断だったんだ。新井本人も苦しんで、その打順(4番)で乗り越えるという手もあったけど、チームも借金を背負ってオールスターまでに返したい大事な時。やはり状態のいい人を置きたい」。苦渋の決断での4番外し。そして完全復活までは戻せないことを、和田コーチは吐露した。


鶴 直人 選手

2-1で真弓監督のバースディを飾った初戦に続き、連勝を目指す2戦目の先発マウンドに上がったのは鶴。今季3度目の登板だが、過去2度を振り返り、鶴は「テンポが速くなり過ぎた。もっと強弱をつけたい」と話し、「球児さんからもアドバイスを貰いました。内容?それは秘密です(笑)。いい形で入っていけると思います!」と気合いを入れた。開幕をファームで迎えた鶴。フォームを試行錯誤する中で、なかなか本来のキレを取り戻せないでいた。「思いきり腕を振ることを思い出せ」と時には中継ぎで投げさせるなど、中西ピッチングコーチも鶴の再生に腐心した。その中で特に注意を与えたのが「右足を折らない」ということ。右足が折れると上体が下がる。すると外へのいい角度の球がいかないのだ。

それとテークバックだ。「テークバックを忙しく使う。背中に入れようとする」と、これも注意点に挙げた。テークバックについては山口ピッチングコーチも気にかけ、「小さい時からそれでやってきたから直すのは難しいけど、入る方向がちょっと変わるだけでも違うからな」と、今後に向けての修正ポイントに挙げている。そんな鶴が、このゲームでは順調に立ち上がった。自身の好フィールディングも手伝って、五回までを1安打無失点。


藤井彰人 選手

腕も思いきり振れている。何とか勝たせて自信をつけてやりたいーそう願う女房役の藤井との約束事、「いいボールを投げようとせず、『打てるもんなら打ってみぃ!』って、腕を振ろう」も、しっかり守られている。久保ピッチングコーチも「3試合目ということで、自分がどういうピッチングをすれば打者がどういう反応をするとか、配球だとか間合いだとか、自分で冷静に見れる落ち着きは感じる」と、珍しく安心して見ていた。ところが六回、3連打を浴びて降板。「何とか粘りたかったんですけど、同じことばかり繰り返して・・・悔しいです」。口からこぼれるのは反省の言葉ばかり。けれど鶴の気迫のこもったピッチングは、野手を奮い立たせた。

九回裏。マウンドにはジャイアンツの“新守護神”の東野が立った。マートン、ブラゼルの連打に新井の四球。無死満塁とお膳立てが整って、代打の神様・桧山の登場だ。初球から振っていってファウル。ボールの後の3球目を思いきり振り抜いた。ライトへ高く上がった打球は大村のグラブに収まり、と同時に代走・柴田はスタートを切った。サヨナラ犠牲フライに、チームは歓喜した。「柴田がよく走ってくれたし、その前に鶴がいいピッチングして、最後の球児までピッチャーはしっかり投げて繋いだ。バックもしっかり守って・・・皆で勝ち取ったゲーム」と桧山が語るように、チーム一丸の勝利で、2戦目もモノにした。


桧山進次郎 選手

こうなったら目指すは3タテだ。先発が岩田とあって、尚更その期待は膨らんだ。ところがその岩田が乱調だ。5連打を浴びて4失点。プロ初登板初先発以来の自己最短タイとなる3回KOは、誰も予想だにしなかった。「自分が投げたいところより高く甘く入った。もっとボール球を使っていったら良かったんですが・・・揃えすぎてしまって。わかってはいても、その流れを止められませんでした」とうなだれる岩田。つられるように打線も元気なく0封されてしまい、3連勝は阻まれた。

9連戦の最初のカードを2勝1敗と勝ち越し、乗り込んだ横浜でも第2、3戦に打線が爆発し、2カード目も勝ち越し。これで負け越し数は2つにまで減った。オールスターまでの「借金完済」には、残るカープ戦での3連勝しかない。新井が“定位置”に戻った打線は上り調子。先発には久保が帰ってくる。いい形で前半戦を終えて、勝負の後半戦を迎えたい。