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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-22 若い力も躍動!後半戦スタート!


能見篤史 選手

オールスターが終わり、プロ野球は後半戦に突入した。今年は東日本大震災によって開幕が延期された為、後半戦も前半戦とほぼ同じ数の試合数が残されている。前半戦を1つの負け越しで終えたタイガースは、恒例の夏のロードに出る前に、1つでも多く“貯金”をしておきたい。

後半戦は甲子園6連戦で幕を明けた。まずはドラゴンズ戦、そしてベイスターズ戦と続く。初戦はエース・能見を立てて臨んだが、どうもらしくないピッチングだ。先制してもらいながらも追いつかれ、勝ち越しも許してしまった。結局五回を終えたところで降板。7安打3失点という結果だった。


森田一成 選手

しかし、ここで思わぬ“若い力”が躍動した。この日、初の1軍昇格となった森田だ。能見に代わる代打としてプロ初の打席に立つと、初球のフォークを空振り。続く2球目のまっすぐを見事に左翼ポール際に放り込んだ。同点の2ランだ。カクテル光線に照らされたダイヤモンドを、万感の思いで一周する森田。ベンチ前で野太い腕を広げて迎えてくれたのは、“師匠”として慕うブラゼルだ。熱いハグで祝ってくれた。試合後には、更に手荒い祝福が待っていた。ヒーローインタビューを終えてベンチに戻ると、ブラゼルがシェービングクリームを塗りたくったタオルを顔に押し付けてきたのだ。「目に入って痛い・・・」。赤く潤んだ瞳はきっと、シェービングクリームのせいだけではなかった筈だ。

初昇格、初打席で初ホームラン。誰もができることではない。「あの場面、あのピッチャー(ネルソン)から打てるのは、何か持ってるね。本人には勿論嬉しいホームランだろうけど、チームにとっても流れを引き戻す大きい1本だった」。和田コーチが感嘆すると、片岡コーチも「技術の良い悪いより、初打席でホームラン打つのは大したもんや」と呼応した。そして更に片岡コーチは「初球のスイングや。初球、思いきり振ったことがホームランに繋がった」とも付け加えた。「ただ振るだけじゃなく、あれはいいスイングやった。ボールを見てしっかり振ってた。初球を振れと言われても、なかなか振れるもんじゃない」。飛ばす能力だけでなく、積極性と思いきりが加わった森田ならではの初打席初本塁打だったのだ。


森田一成 選手

昨秋、今春と1軍キャンプに呼ばれ、その飛距離は1軍首脳陣に十分アピールすることはできた。しかしチーム編成上、守備力の落ちる森田を1軍に置く余裕はなかった。ファームで打って結果を残すしか道はなかった森田だったが、なかなか思うようにいかない。6月頃から悩みはじめた。7月に入った頃、吉竹ファーム監督が声をかけた。「打つ時、足を上げないようにしろ」と。それまで高く上げていたが、ほぼ摺り足にモデルチェンジした。「元々ミートは上手い。当たれば飛ぶんだけど、その確率を上げる為にね」と吉竹監督。「足を上げない分、タイミングも早くとれるし、無駄な動きが無くなる。つまり、バットに当たる確率も上がる」と説いてくれた。

足を大きく上げると自然と大振りになるし、差し込まれたりボール球を振ったり、また空振りも多くなるという。逆に上げないと、「多少、我慢ができる。その“ちょっと”が大事なんだよ」と続ける。“ちょっと”の我慢が、ボールの見極めになる。1つボールを見ることでカウントがバッター有利になり、確率も上がる。また、四球を選べたりもする。「“ちょっと”でいいんだ。その“ちょっと”を変えることで大きく変わるんだ」。確かにほんのちょっと・・・数センチが、森田の運命まで大きく変える結果になった。「今の森田には合っている。でもその中で、また変化していかなくちゃいけない。段階を踏んで、常に追求していかないとね」。更にここからの進化を求める吉竹監督。またその進化していく過程を、ずっと温かく見守ってくれるだろう。


ランディ・メッセンジャー 選手

ドラゴンズに2連勝し、最大11まで膨らんだ“借金”を全て完済した。さぁ、ここからは“貯金シリーズ”だ。そう思った矢先、3戦目に敗れ、ベイスターズ相手に初戦は引き分け、2戦目は完敗だった。これで再び2つの負け越し。ベイスターズ3戦目は何としても勝って、再び5割復帰に王手をかけたい。先発のメッセンジャーは7月15日以来、中15日での登板だ。登板前、こんな話をしていた。

「もっとたくさん投げたい気持ちがあるのに、投げられないのは悔しい。開幕当初も飛ばされたことがあって、悔しい気持ちだった」。チームの勝利に貢献できる自信があるからこそ、そのチャンスを与えてもらえないことに歯痒い思いを抱いていた。そこでメッセンジャーは、自分と向き合った。「すごく悔しいけど、そういうことで怒ったりするより、メンタルな部分でキープする努力をした。ボクにはもっといいところで投げられる能力があるんだ、と信じることにしたんだ。信じていれば、必ず誰かがボクのことを見てくれてるってね」。素晴らしいセルフコントロールだ。その思いはそのまま、ボールに乗り移った。立ち上がりこそ制球が安定せず先頭に四球を与えたが、後続を難なく打ち取ると、四回までノーヒットピッチング。

五回、先頭に2ベースを許すも、ここも落ち着いて捌き、六回を終わって1安打無失点。「勝利の方程式」を使うならば、本来は七回は榎田だ。しかし榎田は前日に登録抹消となっていた。ここでメッセンジャーは素晴らしい底力を見せた。先頭の村田にはうまくライト前へ運ばれたが、そこからギアチェンジだ。ハーパー、金城をスプリットで空振り三振に取ると、渡辺にはカーブで三者連続空振り三振を完成させた。「メッセは今年一番良かった。間隔が空いて、『見とれや』という感じがあったんちゃうかな」。こう讃える藤井には、実はメッセンジャーに対してある思いがあった。「初めて勝たせてくれたんがメッセやったんや・・・」。正捕手である城島を休ませる為に、時折マスクを被った藤井だが、自身スタメンマスクでチームは4連敗。そのことが藤井の中で大きく影を落としていた。


藤井彰人 選手 & ランディ・メッセンジャー 選手

しかし6月8日のマリーンズ戦。メッセンジャーとのバッテリーで、藤井は初めて勝利の喜びを味わうことができた。「初めて勝たせてくれた・・・ボクの中では常にそういう思いがあるんや」。それくらい、嬉しく心に残る“初勝利”だったのだ。「メッセ本人には言うたことないけどね」。照れ臭さもあって、藤井自身の胸にそっとしまっている。

8月からは恒例の夏のロードだ。週の前半は主にドラゴンズ、ジャイアンツ、後半はスワローズ、ベイスターズと極端な日程だが、先発ローテーションが安定しているタイガースにとっては、日程の偏りは不安材料にはならない。ただ一つ、心配事を挙げるとすれば榎田だ。全身の疲労から登録を抹消。「筋出力が落ちていたので、3日間はボールを握らせない」と話す続木トレーニングコーチのもと、疲労回復に努めている。ランニングとインナー系のウェイトを中心に、本来のパフォーマンスを出せる体に戻していく。「9月10月の大事な時期の為の準備。充電期間」との中西コーチの言葉どおり、まさにシーズンが佳境に入る時にこそ、榎田の力は無くてはならないのだ。当面はブルペンも一丸となって戦っていく。そして榎田が戻ってきた時、タイガースは首位獲りに向けてスパートをかける。