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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-23 夏のロード真っ只中!京セラドーム スワローズ3連戦回顧


鳥谷 敬 選手

聖地・甲子園球場を高校球児たちに明け渡し、夏のロード真っ只中のタイガース。「死のロード」といわれたのは昔の話。今は交通手段も宿泊施設も快適だ。何より、途中にうまく京セラドームでのゲームが配されている。自宅に、家族の元に、帰ることができるのだから、そこまで苦ではない。難点を挙げるとすれば、練習時間を多くとれないことと、人工芝のグラウンドが続くことでの下半身の疲労だ。しかしそこはプロ。「バットを多く振るようにしている」(鳥谷)とか、「自分の足と相談しながら、走る量を調節する」(桧山)など、各自で考えている。


久保康友 選手

では今回は、京セラドームで行われたスワローズ3連戦を振り返ってみよう。初戦の練習中、いつもニコニコ明るいあの選手が姿を見せなかった。前日の東京ドームで途中交代していた赤毛の助っ人の容態を、誰もが気にかけた。試合直前に、常川チーフトレーナーが会見を開いた。「昨日、東京都内の病院に行き、今日、大阪市内の病院で精密検査をしたところ、異常なしでした」。ホッとした空気が流れたものの、「気分が悪い・・・体調不良ということです。大事をとって自宅安静にします」と欠場が明かされ、「熱も痛みもない。ただ・・・食欲もありません」との言葉に、報道陣も心配を募らせた。

リーグトップの安打数を誇る核弾頭を欠き、打線の組み替えを強いられた。1番・上本、2番・平野。足と小技を期待されたが、この日は村中の前に出塁すら許されなかった。「今まではストライクがとれないピッチャーだったけど、今年はまとまってきた。打たせてとるピッチングができるようになった。とにかく、あのまっすぐを打てるかどうかだよ」。和田バッティングコーチが警戒したように、プロ初完封を経験し自信を深めて臨むこの試合で、若者は躍動していた。


関本賢太郎 選手

1、2番だけではない。六回までわずかに2安打。同じく無失点で踏ん張る先発の久保に、何とか援護点を・・・。突破口を切り開いたのは鳥谷だった。七回。先頭でこの日初ヒットを放つと、塁上で何度もスタートを切って村中にプレッシャーをかける。ブラゼルの右前打で一、三塁とすると、とっておきの代打・関本の登場だ。その初球。迷いなく振り抜き、そして鮮やかに逆方向へと運んだ。「初球?一応狙ってたけど、いいピッチングしてたから、それにとらわれず打てる球がきたら自分のバッティングをしようと思ってた」と振り返る関本。「殆どまっすぐとフォークやったし、ファーストストライクを打っていかないと打てないピッチャー」とも言い、「集中してた。必死のパッチです」と、お決まりのフレーズで笑いをとった。研ぎ澄まされた集中力だけではない。相手投手に対する、日頃からの研究や分析において、関本の右に出る選手はそうはいない。「関本様々やねぇ。しっかり準備してくれてる。初球を振ることはできるけど、仕留めることはなかなかできない。関本に尽きるね」。片岡バッティングコーチは、最大級の賛辞を贈った。


上本博紀 選手

初戦をとれば、次なる目標は勝ち越しだ。2戦目は並び順を変え、1番・平野、2番・上本となった。ここで奮起したのが上本だ。「昨日のことを反省して、簡単にアウトになったり三振したりしないようにしないと。今日は何とかしよう」。心に誓っていた。まず初回。しっかりと見極めて四球で出塁すると、盗塁のスタートを切り、鳥谷の二塁打で悠々先制のホームを踏んだ。見事、ランエンドヒットの形になった。次打席の四球を挟んで、先頭で迎えた3打席目はレフト線へ引っ張っての2ベース!鳥谷の進塁打から新井のタイムリーで、また得点を重ねる。4打席目にもセンター前を放つと、すかさず盗塁を決めた。仕上げは一死満塁での最終打席。犠牲フライでスワローズにトドメを刺した。「四球2コが大きいと思います」。上本は自分の役割をしっかり理解している。「打つのは結果論。打てないこともある。四球とか、できることを大事にしていきたいし、バントとか繋ぎ役に徹していきたいです」。「振りが速くなった。毎日振り込んでるからな」と片岡コーチも、その成長ぶりに目を細める。「体は小さくても力がある。ツボを持っている」。和田コーチはこう表現する。「センスある。たまにしか出なくても、ベンチで相手を研究しとる」。走塁、盗塁に関しては、山脇外野守備・走塁コーチが口を添える。


上本博紀 選手

「打」「走」はレギュラークラス。課題は「守」だ。上本本人も「毎試合ってくらい迷惑かけてるんで、しっかり練習するしかない。ミスが当たり前にならないよう、悔しさをもって、練習に取り組んでいきたい」と自覚している。ただ久慈内野守備・走塁コーチは「経験だよ。大勢の人に見られる中で成功することが成長になる。もちろん練習は大事だけど、それ以上に経験」と見守る姿勢だ。「今は監督も我慢しながら使っている。ここで自分自身がどう考えるかだよ」。レギュラーを掴むのか、控えで終わるのか。上本次第だ。「アマチュア時代に高いレベルでやってるし、試合に出れば出るほど味が出る。ただ、体力的に続けられるか。続けられればレギュラーになれる。出始めはいいけど、1週間くらいすると失速するからな」。和田コーチの言葉からは、大いなる期待が感じられる。「思いきりがいいのが持ち味だし、塁に出たら相手も警戒してくる。もっと嫌らしさが出てくれば。くせ者の域に達して欲しい」。なれるか、「和田二世」に。


クレイグ・ブラゼル 選手

2連勝となると目指すは3タテだ。ファームでミニキャンプを行い、徹底的にランニングと負荷の大きいウェイトを自らに課してきた鶴。先発を控え、「まず試合を作って、相手より先に点を与えない」と意気込んでいた。しかし空回りしたのか、コントロールが定まらない。二回に捕まり、2点を失ったところでタオルが投げ込まれた。「自分のタイミング、バランスで投げられてなかった。修正していきたい」。声を振り絞って話す鶴は、ただただ己の不甲斐なさを責めていた。

しかしチームは崩れなかった。三回に平野からの連打と四球で二死満塁。ここでブラゼルが走者一掃の2ベース!もう少しでセンターフェンスを越えようかという特大タイムリーだった。「スタンドのみんなが深呼吸して風を送ってくれたら、ホームランになったのに」。ブラゼルの口からは、ご機嫌なアメリカンジョークも飛び出す。来日100号まであと1本。ここぞという場面での1発を、誰もが期待している。7投手を繋いで三回以降を0封にし、首位・スワローズに堂々の3連勝。タイガースは再び遠征先へと向かった。

名古屋では0-1で先勝しながら、1-0、1-0の珍しいスコアで負け越した。そして再び神宮での首位との戦い。思わぬミスもありながら、何とか勝ち越した。これでスワローズとは4ゲーム差。ただし3位・ジャイアンツが0.5ゲーム差で忍び寄る。2位からの4チームが2.5ゲーム差の中でひしめき合うセントラル・リーグ。マートン、榎田が復帰し、盤石の駒が揃ったタイガースの戦いから、益々目が離せない。