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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-37 『リーダーの気概』と『職人のこだわり』・・・猛虎主力、それぞれの冬景色


鳥谷 敬 選手

いつも通り冷静で、きっぱりとした口調だった。「個人個人も優勝したい気持ちが強いですし、球団もそれは一緒なので・・・!」。スーツ姿が凛々しい。猛虎の顔にとどまらず、今や野球界を代表する存在となりつつある鳥谷の自信に満ち溢れた表情が、何とも頼もしく思えた。

12月22日(木)、一年で最も昼が短くなる『冬至』。兵庫県西宮市の球団事務所で鳥谷敬内野手が、契約を更改した。「納得してサインしました。出塁率、ゴールデングラブ賞であったり、チームに貢献してくれた!と言うことを言ってもらいました」。

故障もあってフルイニング出場こそ逃したものの、今季も全144試合に出場。プロ8年目で初めての打率.300(5本塁打 51打点)をマーク。82四死球が効いて最高出塁率(.395)のタイトルを獲得した。三塁打7はリーグ1位で盗塁16はチーム最多。スローイングも安定した守備では失策わずか5など抜群の数字を誇り、平野恵一内野手と共にベストナインとゴールデングラブ賞を手にしている。


鳥谷 敬 選手

「個人的な目標は、今年ゴールデングラブ賞を獲れたし、来年も全試合フルイニング出た中で獲りたい。(今季はフルイニング出場が途切れたりして)後悔と言うのはないが、どんな状況でも試合に出切る!と言うことが出来なかった」。だから、4位と言うチーム成績も含めて全てが『薔薇色』だった訳ではない。

推定年俸では、巧手で名高い中日・井端弘和内野手(2010年度)に匹敵する国内現役遊撃手として最大級の評価を得ても、浮かれる様子は全く見当たらない。「金額で争うものではないので・・・。(井端サンは)何年もゴールデングラブを獲ってる選手。自分はまだまだ。守備だけと言う訳ではないが、まずはしっかり守備をした上で打撃と考えている」。

選手会長は関本賢太郎内野手に譲っても、新たにキャプテン制を敷く和田体制にあって、藤川球児投手と共にナインを引っ張る立場に変わりはない。野手のキャプテンとして、リーグ優勝~日本一を渇望する気持ちは誰にも負けない自負がある。

「トレーニングは毎年違ったものをやってるが、一番はケガしない身体を作る事」。働き盛りの30代に入った。あくまでもプレーでナインを引っ張る事が基本だが、選手とチームを繋ぐ橋渡し役としての期待も大きい。「特に若いコを(引っ張る)と言うよりは、チームとして優勝したいな!と・・・。(キャプテンに指名されても)やれる事は限られてると思うので、グラウンドで若い人、ベテランの方に刺激を与えられるようなプレーがしたい!」。クールな表情は相変わらずだが、言葉はチームスローガン通り『熱く』なっていた。


久保康友 選手

クリスマス寒波が到来した12月23日(祝・金)。久保康友投手が、神戸市内の放送局でテレビのスポーツ情報番組に生出演。『世界の盗塁王』福本豊サンや阪神OB・中田良弘サンらを前に、来季への意気込みを語っている。

いつもながらに多忙なオフだ。大阪府泉大津市の社会福祉施設で障害者自立支援のワークショップを見学したり、各種クリスマスパーティーに出席するなど、ファンとの交流にも積極的な姿勢を見せている。

社会人から千葉ロッテ入り。阪神に移籍して、早3シーズンを終えた。昨季はチーム勝ち頭の14勝をマークして大車輪の活躍だったが、今季は左脇腹痛の故障もあって夏場にファーム降格を味わった。シーズン中も打撃練習や体幹メニューなどを積極的に行い、多少体の張りを感じる中で投げた結果、脇腹を痛めてしまった。登板は20試合にとどまり、8勝8敗 防御率3.78。一軍でフルシーズン先発ローテを守る事が出来ない不本意な一年だった。「チームもそうだが、個人的にも貢献出来ず、途中抜けてしまって、情けないし、残念!」と振り返る。


久保康友 選手

だからこそ、このオフはいつにも増してトレーニングに気が入る。久保は『強い球』を求めて、昨季後半から『身体の強さ』を求めるメニューに取り組んでいると言う。今オフはシーズンの疲れを取りながら、「同時に(このメニューに)入って、順調に進んでいる」ようだ。

気になるトレーニングの内容だが、「まぁ『体幹』でイイ。なかなか言葉で表せない部分。筋力と言うのも違うので、『体幹』が一番近い」と説明。「器具の導入は、あまりない。それがないとトレーニング出来なくなるので、ソコでしか出来ないような(特定の)器具は使わない」。この辺りにも、『哲学者』の異名をとる久保らしいこだわりを感じさせる。

「(現在は)ボール自体を投げてないので・・・ソコ(投げた時の感じ)が一番大事だから。しっかりオフでやった事を出せるように・・・身体だけ強くなっても仕方がない」。ただ、今は『強い球』を投げる土台を築く事に専念する段階。楽しみは、ボールを投げられるようになる年明けまで取って置く。


久保康友 選手

フォームなどを、例えば海外の選手を手本にするプレーヤーも多いが、久保は独特の感性に従う。「基本的にメジャーの選手は参考にならない。体の使い方とかも違う。(国内でも)正直(そう言った)ハナシが出来る選手がいない」。厳密に言うと、「数人」はハナシが通じるらしい。金本知憲外野手らも強靭な身体を作るトレーニングを続けて来ているが、同じ体を鍛えるにしても「ジャンルが違う」と表現。「お互いの道で極めて行かないと・・・。全員が理解出来る事ではない。そこに到達した人間だけにしか分からない。方向性が違うと絶対理解出来ない」。同じ野球選手でも、追求する分野は多岐に渡るのである。

そのジャンル・ジャンルで、本当の意味で理解出来ている選手は、「一部の一部、ごく一部しかいない。それがプロの世界」であると言う。「身体の作り、使い方でこういう風になりたい。そしたら、ココを強化しようか。(自分は)誰と同じタイプなのか?(トレーニングメニューなども)どれが合うか?は、自分しかチョイス出来ない。分かる選手は分かるし、分からない選手には分からない」。まさに職人の世界なのだ。

クリスマスは愛する家族と食事をしたり、リラックスした時間を過ごした。年末年始は球団施設が閉館となる事もあって、例年通り奈良県の実家近くで汗を流す。万葉集にも詠われる名勝・大和三山(香具山・畝傍山・耳成山)に囲まれた飛鳥の壮大な自然を満喫する新春。1月6日からは、千葉ロッテ時代から慣れ親しむ暖かい沖縄・石垣島での自主トレーニングに専念する予定だ。

まもなくやって来る2012年。来季こそは負けられない。ルーキーイヤーに日本シリーズで倒した猛虎を、今度は自らの右腕で頂点まで押し上げる為に・・・!初日の出と共に『プロのこだわり』を持つ男が、新たなる一歩を踏み出す。