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Vol.2010-3 春の聖地で『希望』うごめく!


白仁田寛和 選手

春の代名詞は既に盛りを過ぎて『葉桜』となっていた。それでもまだ寒い甲子園で、ファームの虎たちが少しずつ明日への大輪を膨らませて行く。

4月13~15日 甲子園でウエスタン・リーグ公式戦(対広島)が開催された。全体的には打線低調、投手優位の3連戦となる。

初戦は、先発の福原が被安打7と毎回のように走者を背負いながらも要所を締めるピッチングで7回(97球)を無失点。江草~石川と完封リレーを完成させて3対0で快勝した。


川崎雄介 選手

14日(水) 対広島5回戦は2対1の惜敗。白仁田がスターターを務め、6投手による小刻みな継投ながら広島打線に2点しか与えなかった。6回には、3番手として千葉ロッテから金銭トレードで獲得した川崎雄介投手が移籍後初登板。若鯉をわずか8球で軽く3者凡退に料理して1イニングでマウンドを降りた。

4番岩本をニ飛。5番堂林は3球三振。6番中谷は中飛…最速は130㎞/h台と平凡だが、シュート、スライダー、ツーシーム、カットボールなど多彩な変化球を操る左腕のキレは申し分なく圧巻の猛虎デビューとなった。「(甲子園は)投げやすかったですね。(マウンドは投手によって)合う合わないがある。(感触が)良かったので、噛み締めながら投げたが、あまり球数を投げられなかった。駆け引きもあるし、もっと色々投げたかったんで…!」と物足りなさそうに川崎は振り返る。2008年にはパ・リーグの最優秀中継ぎ投手に輝いた実績が彼の実力を雄弁に物語るが、とは言ってもリーグが変われば不安もつきまとう。「毎日 地上波でテレビを見て雰囲気を見てる。どういう使われ方があるか?と。セ・リーグは全くパと違うので…」。


川崎雄介 選手

「川崎?良かったんじゃない。マウンド捌き、経験豊富だから落ち着いてる。コントロールが良いし、チェンジアップみたいなボールが有効的!」と、ファームを率いる平田勝男監督が太鼓判を捺した。中西清起ファーム投手コーチも賞賛を惜しまない。「実績持ってる投手だし、組み立てやピッチングの巧さは持ってるね! 真っ直ぐはそうでもないけどな。堂林を(3球で三振に)打ち取ったのが基本線じゃないか? 実戦というか、ゲーム映えするタイプだね!」。実際に球を受けた岡崎太一捕手は、「コントロールが良かった。低めに丁寧に来てたんで。(変化球が多かったのは)ブルペンで捕った感じは変化球が良かったし、展開的にも真っ直ぐで押せる展開ではなかったので。堂林の(空振り三振した球)は、チェンジアップ。器用な感じがする。大崩れするタイプじゃない」と新戦力を高く評価していた。(その言葉通り、川崎は試運転もそこそこに3日後の17日(土)一軍登録。即日横浜スタジアムの横浜戦・7回裏1ポイント…緊張しながらも石川を一ゴロに抑えて、無事にセ・リーグ初登板の役目を果たした)


ジェイソン・スタンリッジ 選手

このゲーム先発の白仁田寛和投手は3回(59球)4安打1失点だったが、「(試合のテーマにしていた)変化球でカウントを取る事は、前回より出来た。(甲子園のマウンドで)先発するのは初めて。音が響きますね! 要らない四球もあったけど、まとまりは前回より良かった」と前向きに捉えていた。

攻撃では、東北楽天からの移籍で育成選手として再出発の西谷尚徳内野手が、8回代打で速球派 岸本から右中間三塁打を放った。2ボール後の3球目真っ直ぐを狙い打ったものだが、9回裏の二死満塁・逆転サヨナラのチャンスには三ゴロに倒れて、「アソコで打てればもっと良かったですけどね。アレがボクの実力」と唇を噛んだ。それでも、「(甲子園で)プレーしたのは初めて。最高ですよ! (セカンドを守り)土のグラウンドで経験した中で。何もかも守りやすいですよ!」… 非常に新鮮な感覚で真摯に野球と向き合っている気持ちが現れていた。

新戦力スタンリッジが2度目の登板で4回無失点と良い答えを出した3連戦の最終日(15日)には、4番に座った野原将志内野手が劇的なサヨナラ安打を放ち、1対0と投手戦を勝利で飾った。9回裏 先頭の坂が右中間を破る三塁打でお膳立てをした無死3塁。敬遠して塁を埋める選択肢もあるが、ここで相手は迷わず『4番』と勝負に出る。野原将は初球、身体に近いところを攻められて燃える。カウント2-2から岸本の真っ直ぐをしっかりセンター前に打ち返し、試合を決めた。


野原将志 選手

テレビのインタビューに答えたプロ4年目のヒーロー。「坂さんが三塁打で回してくれてたんで、何としてもボクが決めるという気持ちだった。自分でも(4番打者というより)『4番目の打者』という感覚で立ってるので、ああいう場面で極端に言うと逃げられるような打者に成れれば良いかな?と思う」。… 結果を出しても、サヨナラの場面で歩かされない今の立場が不満だった。 次は、『相手が恐れる存在』を目指して更に進化を目指して行く。

若虎たちにとっても憧れの舞台である甲子園での試合では、バント失敗を始め随所にミスも見られ、課題も浮き彫りとなった。ゲーム後も延々と練習が課される光景に改めてファームの厳しさを感じた3日間。しかし、失敗もまた、必ず明日の糧になるはずだ。その週末には、新装の沖縄セルラースタジアム那覇(奥武山)で巨人と沖縄県初の公式戦ナイトゲームも体験した若き虎たち。今後の成長がますます楽しみである。