若い力の台頭が未来への大きな希望となる。 新しい時代が猛虎にも確実に近づいて来ている。
7月9日(金)甲子園の一軍公式戦(対横浜8回戦)で、8回ファームから初昇格したばかりの2年目 上本博紀内野手が代走に起用され、二盗に成功(プロ初盗塁)! 送球が体に当たって外野に転々とする間に三塁を蹴り、一気に生還する好走塁で決勝点を上げた(プロ初得点)。 同じく新鋭の大和内野手と共にヒーローインタビューに呼ばれ、一軍出場わずか2試合目で一躍『時の人』 に…。この日は、ルーキー藤原正典投手が7回表を三者凡退に打ち取る好投! 8回をゼロに抑えた西村憲投手が救援勝利(6勝目)をマークするなど、若手の活躍が目立った。
西村 憲 選手
『育てながら勝て!』のチーム方針が少しずつカタチになりつつある今季だが、これでファームが活気づかない訳がない。 次に続くのは誰か?…
ウエスタン・リーグは、オリックス、福岡ソフトバンクと三つ巴の激しい首位争い。7月12日現在 阪神ファームは、59試合30勝24敗5分の勝率.556で2位オリックスに1ゲーム差、3位ソフトバンクと2ゲーム差のトップに位置している。
7月13日(火) ウエスタン・リーグ 中日戦が雨天によるコンディション不良で中止となった鳴尾浜だが、若虎たちはマシン打撃やウェイト・トレーニングといったメニューとしっかり向き合っていた。
育成ドラフト2位ながら、ルーキーイヤーの開幕直後という異例の早さで支配下登録された田上健一外野手は、50m5秒7の快足を武器に一軍への階段を上がりつつある。(12日現在 ウエスタン・リーグ出場58試合 198打数28安打 .258 本塁打0 打点15 得点28 盗塁16 )
田上選手に今の心境などを訊いた。
田上健一 選手
― フレッシュオールスター(7月22日・長崎ビッグNスタジアム)出場について
田上:良いアピールの場になると思う。 自分の持ち味を出したい。それは、『足の速さ』とかと言った事。選ばれたメンバーから盗塁を決められたら、自信になる。
―上本選手の活躍は刺激になる?
田上:自分もああいう風にやってみたい。一軍でああいう使い方(勝負どころの代走)されるように信頼を得たら、普通にやれると思う。その為にはファームでしっかりとした結果、成績を残す事。そうすれば(上からの)信頼も自信も…。
―当面の課題は?
田上:打撃では、ボクのようなタイプはバントとか進塁打が多くなる。ミスのないようにするために(反復練習などで確率を高める)。 守備については、急に肩が強くなったりはしない。先ずは基本的な事が出来れば…。今は最低ラインを上げている状態。
田上健一 選手
―盗塁については?
田上:(実際にプレーしていないので)一軍のレベルがまだ分からない。ただ、キャンプで赤星さんと話す機会があり、「盗塁には『勇気がいる』と教えてもらった。走者になったら(躊躇して一塁でアウトになるよりも)、アウトになるなら二塁で(次の塁を狙って)と…。 (ファームで16盗塁という)数字がイイかどうか?良く分からないけど、(塁に)出た時には、常にスタートは切れていると思う。
―夏場は、どのような事に気をつけて過ごしているのか?
田上:夏は温かいし、動きやすい。(水分補給や睡眠に気を配るのは勿論だが)生活のリズムを崩さないようにしている。出来るだけ生活を変えないように…遠征以外は同じリズムで。そうする事が、安定した成績を保つ為に大切だと思う。
―普段の生活で大切だと思うのは?
田上:ルーティン(日常の中で行う決まった作業)には色んなのがあるが、自分の中でも例えばスパイクを履いて紐を結ぶにしても(やり方、手順に)こだわりがあって、一つでも欠けると不安になる。 (こういう事は)大学では既にやっていたし、こっち来てからも(慣れてからはずっとやっている)。
上本博紀 選手
こうした傾向はイチロー選手などにも見られるが、極度の緊張の中でも安定した力を発揮出来るように、毎日の生活も出来るだけ同じリズムで過ごせるように細かいところに気を配るスタイルのようだ。アスリートなら、それぞれに個性的な生活様式を持っているもののようだが、田上も然りであった。
新星が続々と頭角を現すムードが高まる中、 言葉には出さなくても若虎たちの練習姿勢にコーチ陣も手応えを感じている。「上本はアレが持ち味だから!」…永尾泰憲ファーム守備走塁コーチも目を細める。ただし、こうした事は普段から培って来た事が一軍の大舞台で必然として表れたに過ぎない!と言う。「予備軍は(大和や藤川俊、上本らの他にも)いっぱいいるよ!」。
野手だけに限っても、柴田、野原将、森田、…楽しみな逸材はまだまだ鳴尾浜に残っている。ファームの何気ない日常の中にこそ、飛躍のヒントが散らばっているのかもしれない。