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Vol.2011-2 新芽から大樹へ!春の鳴尾浜『育成』だより


清原大貴 選手

春爛漫の鳴尾浜に若い力がみなぎる。新芽を出したばかりの者、今年こそ大輪の花を咲かせようとする者、・・・スタンドからネクストジェネレーションの星を探してみた。

4月19日(火)桜の季節を過ぎても尚、鳴尾浜には冷たい風が吹いていた。関西独立リーグに所属する韓国チーム『ソウル・ヘチ』との育成強化試合が行われた。ファーム本隊よりも更に若手中心に編成された阪神だが、それでも随所にプロの貫禄を示すゲームとなった。

先発は、4年目の右腕・清原大貴投手。立ち上がりから危なげのない投球で着実にアウトを積み重ねて行く。特に目立ったのは、コーナーを突く直球のコントロール。落ち着いたプレート捌きがベンチの信頼感を更に高める。2回先頭打者・4番DH梁承鶴選手へのシュートが曲がり過ぎて死球を与えたが、すぐに走者を牽制で刺すなど二塁を踏ませない5回(63球)1安打無失点の奪三振7という抜群の内容で役目を果たした。


島本浩也 選手

「実に良かったと思う。育成のゲームで結構先発してるが、自分のピッチングのカタチが出来てきてる」。遠山獎志ファーム育成コーチが賞賛する。そして、課題を次のように上げて更なる精進を!と注文を付ける事も忘れない。「初球の変化球の入り(腕の振り)が緩む。自分の中でもう少し上を目指して・・・向上心でイイものを(求めて)レベルアップして欲しい。シュートがデッドボールになったけど、幅を効かせる投球をどんどん(追求すればイイ)。何かを本人が感じてやって欲しい」。

清原本人もとりあえずは合格点だ。「自分でも気持ち良く投げられていた。(立ち上がり見逃し三振が多かったが)あれは打者が(打席内でベースから遠目に)下がっていたので外は見えないな!と(外角を狙った)。コントロールがある程度良かった。真っ直ぐはだいぶ良くなって来ている」。だが、自分自身ではまだまだ納得行く状態までには仕上がっていないという。「今年は投げ方がいまいちハマらない」。それはフォーム的なものだとの事で、試行錯誤を繰り返して来た。


岩本 輝 選手

この日の最速は141㎞/h。「スピードは、(もう)諦めている(笑)。去年の今頃(右ヒジ故障からの)復帰戦で144㎞/h。その次に145が出て、その後ずっと下がって来てる」。現在はあくまでも制球重視である。今後は、「2ストライクの後、一発で変化球を決められるように・・・。三振取れる球を投げて行きたい!」と話す。育成試合では文句無しの内容を重ねているが、まだ21歳の若武者に気負いは感じられない。「みんな疲れて来た位の時にね!」。甘いマスクに似合わない不敵な笑いで、飛躍の時期を虎視眈々と窺っている。

その後を繋いだのは、高卒ルーキーの二人。6回を育成枠の左腕・島本浩也投手(福知山成美高)が、7回はドラフト5位・岩本輝投手(南陽工高)が、それぞれ1イニングを1安打無失点で抑える。遠山育成コーチは、二人について次のように話す。「(島本は)そろそろ本隊(ウエスタンリーグでの登板を)考えてます。投げるたびにやろうとしてる事が出てきてる。(注文としては)真っ直ぐをもう少し求めて、強くできる様に磨いて行って欲しい。かわすのではなく自分の一番自信のあるボールをゲームの中で投げて行って欲しい。(岩本は)ボクはまだまだだと思う。『甲子園で何キロ出たんや?』って訊いたら、本人が『144㎞/hです』と言うてたから・・・(この日は最速139㎞/h)。前回と今回は、同じようなカタチでやらせたが、まぁまぁそれなりのボールかな?とは思うが、まだまだ本来のではないと思う。(練習でハードに)動いて疲れてるとは思うけど、もっと(基本となる)真っ直ぐに貪欲に・・・ストレートをぶつけて行って欲しい」。


一二三慎太 選手

島本は、「調子はごく普通。(何度か登板を重ねているので)慣れはある。走者を出しても落ち着いて低めに投げる事が出来たので(これからも)継続して行きたい」と語り、表情も明るい。また、これがプロ4試合目の登板だった岩本は、いきなり先頭打者に出塁を許したが、「四球じゃなくヒットの走者なんで、仕方ない!とすぐに切り替えた。落ち着きもだいぶ出てきた」と、非常に冷静な自己分析だった。

キャンプ中に右肩の違和感を訴え、少し出遅れた一二三慎太投手も、既にシャドーピッチングなどを再開して着々と『復帰』への歩みを見せているが、体調さえ万全なら、高卒ルーキーでも実戦を数多く積ませる方針のファームには、全員に十分なチャンスがある!と言えるかもしれない。徐々に良いカタチを出しつつある島本については、「4月は(育成試合で)しっかりアピールさせて、5月はファーム本隊で!」(遠山獎志ファーム育成コーチ)との青写真も出来つつある。


穴田真規 選手

島本と同じく育成枠ルーキーの野手たちも実戦の中で経験を積んでいる。この日スタメン出場で4打数2安打と活躍した穴田真規内野手(箕面東高)は言う。「ボクの中では、(例えイイ当たりで無くても)ポテンヒットで良い。ちゃんと振り切れてる(ということだ)から。走者二塁とかなら、(ポテンヒットで)ホームへ返れるじゃないですか。(どんな当たりでも)ヒット打てたら嬉しい」。走者になった時には、2度牽制されて「もう絶対無いわ!と思って」いたら、もう一度牽制球が来て刺されてしまうミスもあった。「準備不足と油断。イイ勉強です」と悪びれずに笑う姿が初々しい。

まだ緊張感が取れない中で、新しい経験を重ねる毎日を心底楽しんでいる純粋な『野球少年』たちが、猛虎を背負って立つ大木になる日を、鳴尾浜のファンと共に待ちたい!と感じた。