藤井宏政 選手
日本のプロ野球において、トレードによる契約譲渡やシーズン中の新規契約の可能期間、いわゆる戦力補強が認められているのは7月末日まで。今シーズン開幕時点でのタイガースの支配下選手登録数は68人(総数70人)で、ファームではあと2枠を巡って育成契約の選手たちが支配下選手登録へ向けての競争を繰り広げていたが、7月30日、桟原将司投手の支配下選手登録が発表された。スポーツ紙などで有力視されていたロバート・ザラテ投手が腰のハリを訴えたため白紙に戻り、ファームで先発ローテを担っている吉岡興志投手、オープン戦で一軍に呼ばれていた藤井宏政選手の名前も候補に挙がっていたなか、一軍でも実績のある桟原投手に白羽の矢が立った形だ。昨オフに古傷の左ヒザを手術したこともあって今シーズンは育成選手契約としてのスタートも、6月にウエスタン・リーグのマウンドに復帰し、6試合に投げて無失点。速球は140キロ台後半を記録するなどボールの威力は手術前の状態に戻ってきており、沼沢球団本部長も「もともと力のある選手。一軍戦力になりうると見極めました」と評価した。新しい背番号『79』の実戦初披露となった8月3日のオリックス戦(北神戸)では1回2失点と振るわなかったが、暑い夏場は投手陣の疲労もピークを迎えるだけに、後半戦に向けて貴重な戦力となってくれそうだ。
桟原将司 選手
今回、育成枠から支配下登録されたのは桟原投手だけだったが、もちろんこれで全てが終わった訳ではない。今シーズン中の支配下選手登録がなくなっただけだ。育成選手たちは絶えず結果を残していくしかない。8月2日に行われた関西メディカルスポーツ学院との育成試合に出場した藤井宏選手は3安打1打点。まだ終わった訳じゃないしね?というこちらの問いにも「そうです」と力強く返してくれた。
一軍に目を向けると、最大で11あった借金も少しずつ減らし、8月8日時点で貯金1というところまで持ち直した。首位を快走するヤクルトを追撃するためにも取りこぼしは許されないが、懸念材料となっているのが榎田大樹投手の戦線離脱。ルーキーながらセットアッパーとして開幕から大車輪の活躍を見せていたが、7月30日に疲労のため一軍登録を抹消された。また同日に加藤康介投手、翌日には川﨑雄介投手と左腕が立て続けに抹消され、中継ぎ左腕は小嶋達也投手ただ一人という状況のなか、藤原正典投手と筒井和也投手の両左腕が状態を上げてきている。
藤原正典 選手
8月2日のオリックス戦(北神戸)、先発の蕭一傑投手が迎えた六回一死一、二塁のピンチ場面で、日高、坪井と左打者が続いたことから藤原投手がマウンドへ。それを見たオリックスベンチは代打攻勢をしかけ、右打者の下山、竹原をバッターボックスに送り込んだが、それぞれ三飛、三ゴロに打ち取ってピンチを脱した。試合後藤原投手は「左が並んでたんであるなと思って準備してました。(その後の)右が出てくるパターンは上でもあるんで、そこで結果を残せたのは良かったです」と一軍でも想定し得るシチュエーションで結果を残せたことに安堵の表情を見せたが、「(下山に)初球を打たれたのは反省ですね」と振り返った。蘇るのは7月13日のオリックス戦(鳴尾浜)。九回二死二塁の場面でマウンドに上がったが、代わり端の初球を駿太にライト前へと運ばれて決勝点を奪われた。たった1球が勝負の行方を決めてしまうこともあるリリーフだけに、「入りを慎重にしないといけないですね」とその難しさを語ってくれた。昨シーズンは主にまっすぐとスライダーで勝負していたが、今シーズンからカーブとフォークも投げ出した。「球種が増えたぶん、選択肢が増えてきましたし、バッターにも他の球があるぞと思わせられる。外せる球があるだけでキャッチャーもリードしやすい」とその効果を説明してくれた。竹原への初球にフォークで空振りを獲ったが「右バッターにあのボールは有効なんで」と手応えを感じている。
筒井和也 選手
この試合の4番手で登板した筒井投手は1回2奪三振のパーフェクトピッチング。翌日の同カードでも二塁打を1本許したが、アウト全てを三振で奪う1回無失点の好投を見せ、球速もMAX149キロを記録した。試合後には「スピードは1つの目安でしかないですけど、ボール自体は納得のいくものが投げられています」と調子は上々のようだ。今シーズンは3月の教育リーグで左肩の違和感を訴えて四年ぶりのファームスタートとなるなど苦しいシーズンを送っていたが、一軍への準備は万端だ。両左腕に関して中西清起ファーム投手コーチも「状態はいい。いつでも推薦できる」と太鼓判。手薄な中継ぎ左腕の補強という意味でも、実績のある筒井投手の復調は頼もしい限りだ。