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FARM JouhoukyokuCOLUMN INDEX

Vol.2011-14 2011年ウエスタン・リーグ総括


森田一成 選手

9月29日、今シーズンのウエスタン・リーグ全日程が終了した。昨シーズンに続く連覇を狙ったタイガースファームだったが、111試合を戦って48勝49敗14分、優勝した中日からは16.5ゲーム離された3位という結果に終わった。チーム防御率は2.74と中日(2.60)、ソフトバンク(2.66)の上位球団とも差がなかった一方、チーム打率は中日、ソフトバンクがともに.263だったのに対してタイガースは.248。公式戦最終戦となった9月24日のオリックス戦(鳴尾浜)では、オリックス投手陣にわずか3安打に抑え込まれ、三塁を踏むこともできずに0-1で完封負け。試合後、吉竹春樹ファーム監督は「今日の試合が象徴している。打線が点を取れなさすぎ」とその日の試合と今シーズンを重ねた。


野原将志 選手

ウエスタン・リーグの打撃成績を見れば、その嘆きもよく分かる。規定打席到達者は野原将志選手ただ一人で、その野原将選手にしても打率.233、4本塁打。他の若手を打席数の多い順に並べても、森田一成選手(打率.246、7本塁打)、荒木郁也選手(打率.236、0本塁打)、田上健一選手(打率.245、0本塁打)、甲斐雄平選手(打率.227、0本塁打)と二割台前半の打率の選手が並ぶ。24日の試合、先発の元メジャーリーガー朴贊浩に5回2安打6奪三振に抑えられた。全盛時のボールではないものの、やはりファームの若手ではそうは打てない。しかし、『いいピッチャーが出てきた。良いボールを投げた。打てませんでした』では話にならない。『打てないなら打てないなりにどうすればいいのか』ということが求められている。吉竹監督も「今年一年どれだけボール球に手を出したか。(1ボール1ストライクから)1ボール2ストライクになるか、2ボール1ストライクになるかでどれだけ違うか」と1球、1球を大事にする姿勢を求めた。


藤井宏政 選手

そんな中、前半戦の活躍で支配下登録の声も挙がったのが育成契約の藤井宏政選手。昨オフに母校加古川北高で行った自主トレでは例年以上に走り込み、今年の成人記念品授与のさいには「勝負の年だと思っているんで、結果を出していかないといけない」と意気込みを語っていたが、今シーズンは公式戦77試合に出場して、打率.304、2本塁打。昨シーズンが38試合、打率.152、0本塁打だったことを考えれば、長足の進歩だ。とはいえ、支配下選手登録は結局のところ見送られ、吉竹監督も「伸びた部類だね」と成長は認めるものの、「チャンスを掴みかけたんだけど、壁に当たったね。ショートとしては若干腰が高いし、まだ球際にも弱い」と守備面での物足りなさを指摘した。同じく大幅に出場試合数を増やした原口文仁捕手(48試合、打率.329 、2本塁打)についても吉竹監督は「成長したのは事実」と前置きしながらも、「送球が悪い。一塁側に流れる」と悪癖を指摘。守備面でのさらなる成長を促した。

柴田講平選手、上本博紀選手がシーズン途中に一軍昇格を果たしてそのまま定着。ファームでの数字は物足りない森田選手も、一軍デビュー戦で初打席初本塁打を放つなどセンセーショナルな輝きを見せ、野原将選手、ルーキー荒木選手も一軍初昇格を果たしたが、全体的には物足りないシーズンだったのは否めないだろう。


鄭凱文 選手

一方の投手陣は、鶴直人投手、秋山拓巳投手といった期待の若手が伸び悩んだが、鄭凱文投手と蕭一傑投手が防御率1位、2位を占めた。特に鄭凱文投手は防御率(1.72)に加えて勝率(.833)のタイトルを獲得。特に5、6月は絶好調で、6月は4試合15イニングを投げて無安打、無失点、36回1/3イニング連続無失点と抜群の安定感を見せた。元々スリークォーター気味のフォームを、昨シーズン途中からさらに腕を下げて、サイドスローに近いフォームへと変更。そのフォームも固まったことに加えて、中西清起ファーム投手コーチらが口酸っぱく言い続けてきた緩急、高低を使ったピッチングができるようになり、投球の幅がグッと広がった。鄭投手も「(日本に来てから)今年が一番いい。フォームも固まりました」と今シーズンの出来には手応えを感じている。吉竹監督も「(今シーズンのMVPは)鄭しかいないでしょ」と今シーズンの頑張りは認めながらも、「後半は球筋が慣れられた。今のままではね。まだまだ向上心を持ってやらないと」とさらなる飛躍を期待。鄭投手本人も「来年は一軍でタイトルを獲りたい」と厳しい外国人枠の競争に挑む。


清原大貴 選手

中西コーチが「今年成長した1人」と評価するのが4年目の清原大貴投手。入団してから2年間は故障に苦しめられたが、昨シーズン初勝利を挙げると、オフにはIBAFインターコンチネンタルカップ日本代表にも選出。年が明けても、春季キャンプでの練習試合やプロアマ交流戦、ウエスタン・リーグ開幕後も育成試合で結果を残した。その好投が認められ、シーズン途中から公式戦の先発ローテに組み込まれると14試合に登板して防御率2.42、自己最多の4勝をマーク。さらにシーズン序盤はMAX140キロ前後だった球速も、140キロ台中盤まで伸びるなどパワーアップ。また、プロ入りしてから初めて大きな故障もなくフルシーズン過ごし、内容、結果ともに充実したシーズンとなった。投手経験は高2の春からとキャリアは浅いが、その分、伸びシロは十分。「来年は上にチャレンジできるように、フェニックス・リーグや秋季キャンプを過ごしてほしい」と中西コーチからの期待も大きい。

ウエスタン・リーグは終了したが、フェニックス・リーグや秋季キャンプ、秋季練習など若手選手の成長、鍛練の場はまだまだ続く。シーズン中とは違って、秋は自らを追い込める貴重な時期。この時期にどれだけ練習と実戦を積み重ねられるかで来年が変わってくる。今シーズンから就任した吉竹監督の『みんなにチャンスを与える』という方針のもと、多くの選手が経験を積んだ。その経験を無駄にしないよう、充実したオフを過ごして来年の飛躍につなげてほしい。