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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-14 『4.12』2011年プロ野球開幕


新井貴浩 選手

4月12日。2011年プロ野球が開幕した。3月11日に東日本を襲った未曾有の大震災により、二転三転した開幕日。この日を“勝ち取る”ことができたのは、選手会会長である新井の尽力に他ならない。開幕直前、ナインはそれぞれ被災地への思いを、横12m、縦1.1mの巨大な横断幕にしたためた。「がんばろう!日本」という今季のNPBのスローガンの周りに書き込まれたメッセージの数々。

新井は『想いを胸に共に頑張りましょう』、金本は『みんながついてる!』、鳥谷は『心を一つに!』、城島は『野球力 信じてます』、マートンは『God Bless』、ブラゼルは『Don't give up』、そして真弓監督は『元気だせ』と、東北への熱い思いを文字にした。新井は語った。「しっかりそれぞれがずっと思い続けて、真剣に全力でプレーすることが、小さい力かもしれないけど、勇気を与えられると信じてやりたいですね」。また、2人の男の子を持つ父親でもある新井。「家でも毎日のように震災の話をしている。ご飯を食べる時にも子供たちに『食べられない人もいるんだよ。お水も飲めない人もいるんだよ。当たり前と思っちゃダメだ』って、常に言ってる」。グラウンドを離れても、被災された方々のことを考えている。


新井貴浩 選手

その新井が、いきなり開幕戦で魅せてくれた。2-3と1点勝ち越された六回裏。先頭の平野がバットを折りながら内野安打で出塁すると、鳥谷が四球を選んで無死一、二塁。捕らえたのはカウント1-2からの4球目、カープ先発・前田健の142キロまっすぐをセンター前に運んで平野をホームに迎え入れ、同点とした。更に八回にはチャンスメイク。三塁線を破る2ベースの後、浅井の中前安打で6点目のホームを踏んだ。「緊張したね。解れたのか解れてないのかわからない。ずっと口が渇きっぱなしだった」。試合後、開幕戦を振り返った新井。

初めて虎の4番として迎えた2011年シーズン。「去年は途中から4番だったけど、今年は去年の経験値がある」と少なからず自信を秘めてシーズンインしたものの、やはり最初の「H」ランプを灯すまでは落ち着かない。それが開幕戦でマルチ安打に打点まで挙げることができた。「すごい応援してもらってるし、応援してもらってる中でプレーできることに感謝しながらやっていきたい。色々ありましたけど、開幕したんで今からは、小さい力かもしれないけど、勇気を与えられるように信じて頑張ります」。改めて誓いを立てた。


新井貴浩 選手

今季も強力な破壊力を誇る猛虎打線。昨年とほぼ変わらないメンバーの中で、一人の若虎が自らの居場所を自力で勝ち取った。「8番・センター」の俊介だ。キャンプ中からセンターのポジションを争ってきた。守備には定評があるものの、「バッティングの確実性をもっと上げないと。結果を出さないことには…」と、打撃力の向上が必須であることは自覚していた。オープン戦では状況判断の悪いバッティングをして、序盤でベンチに下げられたこともあった。ようやく手に入れた開幕スタメン。けれど俊介は殊更、平常心を強調した。「去年と変わらないです。やることは同じですから。バッティングはまだまだですけど、いいと思ってやらないと。いい悪いは考えずにやっていきます」。こう話して開幕を迎えた。


俊介 選手

第1打席は二死無走者で回ってきた。ここでの8番の役割は、何としても次のピッチャーまで回すことだ。際どい球をよく見、またカットし、粘った。フルカウントまでいったが、8球目で空振り三振。続いては先頭で打席に立った。ここでも7球投げさせたが、同じく空振り三振に倒れた。「塁に出る」という役割を果たせなかった。第3打席は2点勝ち越した直後、なおも二死一塁の場面。押せ押せムードでもあるし、次打者に繋いで更にチャンスを広げなければいけない。しかし3球目をセカンドフライ。そして八回に回ってきた最後の打席。目の前で城島が敬遠されての二死一、二塁。高校時代以来の、人生2度目の眼前での敬遠。「そりゃアドレナリンが出ましたよ!何としても打ってやろうと」。発奮した俊介は2011年初安打をレフト前に刻み、代打・桧山のタイムリーを呼び込んだ。翌日はマルチ安打を記録した。センターフェンスぎりぎりに運ぶ三塁打に、繋ぎの右打ち。ただ、第1打席の一死三塁で逸機したショートゴロは「最低でも犠飛。ああいうことをなくしたい」と猛省した。

3戦目は2安打1四球。最終回にカープの新守護神・サファテから、完封負けを阻止するタイムリー2ベースを放った。「最後は繋げようと思った。サファテはスピードが速いと聞いていたので、力負けしないようにと思っていた」。開幕3戦で10打数5安打1打点。打率5割はリーグトップだ。自身に課せられている「8番」の役割は、ゲームの中で重要な意味を持つ。「次がピッチャー。2アウトだったら、粘って粘って、何とか次に繋ぐ。絶対にアウトになってはいけないんです」。初戦、粘りながらも三振に倒れたことを「悔しかった」と振り返る。先頭で回れば塁に出てチャンスメイク。得点機には、パンチ力あるバッティングで走者を還す。重要なカギとなる「8番打者」に、やり甲斐を感じている。バッティングだけではない。


俊介 選手

広い範囲をカバーしなければならないセンターというポジションの守備力も求められる。「ベンチからの指示も勿論ありますけど、常にあるわけじゃない。指示が出ていない時は自分で考えて、動いてます」。風向きがよく変わる屋外球場だ。「できるだけ多く旗を見て、確認しています」。様々な条件をインプットして、打球に反応する。開幕から1年間、1軍でプレーし続けたルーキーイヤー。2年目の今季は開幕スタメン。一歩一歩階段を昇ってきた。不動のレギュラーを目指して、これからも俊介は歩みを止めない。