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TORABAN Tantou Kisha ColumnCOLUMN INDEX

Vol.2011-15 小さな体に莫大な闘志を秘めて 一戦一戦気持ちでプレー


平野恵一 選手

開幕して4カード、11試合を消化した。5勝5敗1分けの勝率5割。リーグ4位の位置だ。

昨年猛打を誇った打線が奮わず、チーム打率はリーグ5位の.236。

一方、チーム防御率は2.37で、堂々のリーグトップ。先発6人に限れば、平均2.26だ。噛み合わない投打の歯車。真弓監督も「ちょっと焦りが出てきている。ボール球に手を出すケースが多くなっている」と打線を心配する。しかし、打線の組み換えはキッパリと否定した。その上で、「こっちが我慢するのは当たり前。選手も腰を据えていかないと」とハッパをかけた。

そんな打線の中にあって、明るい光が平野だ。24日現在の打率こそ.214だが、明らかに調子は上がっている。得点圏打率も.500と勝負強さも見せている。

オープン戦序盤では苦しんだ。「ボールがバットにくっ付いてくんないんだもん。ヘニャってなっちゃう。今まで強いゴロ、強いライナーを打とうとやってきたのが、全部ポテッとなっちゃう。力をどう伝えるか、きっかけが掴めない」。今季から新たに導入された統一球の影響を、モロに受けた。


平野恵一 選手

それに対し、和田バッティングコーチは「飛ばない、飛ばないと思い過ぎる精神的な部分が大きい。それで力を入れ過ぎるとインパクトがズレてくる。飛ばないと思って打ち方を崩すのが一番良くない。あれくらい技術のある選手、打ち方は解ってるんだから、ボールはこんなもんだと思ってやらないと」と話し、平野の復調を信じた。

実戦形式の練習なども重ね、漸く“兆し”が見え始めたのが3月も下旬に差し掛かろうかという頃。“らしい”当たりが見られるようになってきた。

「飛ばないって聞いた時点で『ヤバイ』と思ったんだよね。で、キャンプで打ってみて、あまりに反発しないからビックリした。ワンバウンド目が全然だから、強い打球がいかない」と振り返る。「もっと強くと思って、自然と体が力んじゃう。特に右肩に力が入る」。

そこから平野が考えたことは「我慢」だ。「力んでしまうのを我慢して我慢して・・・いいスイング、いいタイミング、いい角度でってやっていくうちに、体が覚えだした」と笑顔も取り戻した。


平野恵一 選手

「体がね、『オマエがそうやりたいなら、そう動いてやるよ』って、やっとついてきてくれるようになった」。平野風の表現で、手応えを語った。

ところが、だ。開幕戦こそマルチ安打を放ったが、いい当たりがことごとくカープのファインプレーに阻まれる。名古屋に移動してもそれは続き、ヒットを何本も「損した」のだ。

平野は危惧した。「打球が抜けてくれないから、今また力が入りつつある。もう一度戻って、自分のスイングをしなきゃ」。改めて今一度、自分の体に言い聞かせた。

そしてまた、当たりが出始めた。「やっと人のいないところに飛んでくれるようになった」と話し、24日のベイスターズ戦では「力むところだけど、気持ちを抑えて我慢我慢」と、貴重なタイムリーをライト前に放った。

打撃だけではない。平野といえば、やはり守備だ。今季も再三、ピンチを救う華麗な美技を見せている。

20日のルーキー・榎田の甲子園初登板時には、セカンド後方の当たりに向かって背走し、最後はジャンプしてキャッチ!シャチホコのような形で着地した。「守備は期待されている仕事の一つだからね」。事も無げに言ってのける。


平野恵一 選手

「守備で評価されなきゃいけない選手だから。守備が出来た上で、更にバッティングもいいとならないと。守備ありきの選手だからね。でも守備がああやっていいと、バッティングも良くなってくるタイプ」と、内野守備担当の久慈コーチも目を細める。

平野本人は「守備とバッティングの関連?どうなのかな。ホントは切り換えて考えたいんだけどね」とは言うものの、「全部が全部、捕れるわけじゃない。捕れない時もある。でも捕れると思っていかないと」と、全力を投じる姿勢は、守備にしてもバッティングにしても変わりない。


平野恵一 選手

「一戦、一戦、気持ちでやってます。個々がしっかり仕事をしていけば、打線もつながる。自分に何ができるのか、何をしなければいけないのか、考えながらやってます」。こう強く話したのは、ベイスターズ戦に負け越した試合後のこと。

「一戦も落とさない気持ちで」。―小さな体に莫大な闘志を秘めた平野がいる限り、猛虎打線が爆発する日もそう遠くない。